研究室の挑戦

”プラスチック”で病気の予防や診断、治療を行う未来へ【小土橋研究室】

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機能性高分子研究室 担当:小土橋陽平准教授

”プラスチック”で病気の予防や診断、治療をおこなう未来へ
 

私たちの暮らしは、たくさんの高分子材料に支えられています。その代表格がプラスチック。
2016年からスタートさせた高分子の研究開発によりこれまでにない機能性高分子の創製に成功しました。
それをバイオマテリアル(生体材料)として、病気の予防や診断、治療に役立てようというのが本研究のテーマです。
例えば、感染を予防する抗菌フィルムの開発。がん細胞を探しあて、抗がん剤を投薬するシステムの開発。
実用化に向け、着々と研究を進めています。



高分子構造をデザインしてプラスチックの潜在能力を引き出す


新しい機能をもつ高分子を開発
高分子とは大きな分子量をもつ材料の総称です。紙や服、コンタクトレンズも高分子です。私たちの体もタンパク質などの生体高分子で成り立っています。高分子は生命現象から日常生活まであらゆる場面に登場します。機能をもつ高分子の中でも、温度やpH、光、分子濃度などを認識し性質を変化できるものを刺激応答性高分子(スマートポリマー)と呼んでいます。私たちは刺激応答性高分子を医療分野に役立てるため研究開発をおこなっています。発熱や体内のpH 変化、病気の部位特有の分子などが、高分子の認識できる刺激に成り得るからです。研究成果のひとつとして“ 抗生物質に耐性を持つ菌( 薬剤耐性菌)に対し、抗菌効果を発揮する高分子”を開発しました。近年、薬剤耐性菌の出現が大きな問題となっており、対策をとらなければ2050 年には関連する死者数が世界で年間1000万人にのぼると予測されています。開発した高分子は、マイナスに帯電している細菌膜を認識し吸着、その後、膜を破壊することで抗菌性を発揮します。薬剤耐性菌のひとつであるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌をはじめ、様々な細菌に対し抗菌性を示すことが明らかになりました。

機能性高分子をバイオマテリアルとして医療分野へ
私たちはこれらの機能性高分子を、バイオマテリアルとして医療分野へ応用することを目指しています。バイオマテリアルとは医療に関係する材料の総称で、セラミックスや金属、高分子を3 大材料としています。縫合糸や人工血管、ステントなどもバイオマテリアルです。現在、医工連携のもと、実用化に向け抗菌性高分子をフィルム化した創傷被覆材の開発を進めています。手術後の傷口や医療デバイスと体の接合部などは細菌の感染源であり、感染した場合は重篤な症状を誘発し患者の負担が非常に大きくなります。抗菌性を有する創傷被覆材はこれらの感染リスクを低減し、quality of life( 生活の質)を高めることが期待されます。様々な分野と融合できるプラスチックは高い可能性を秘めており、医療や環境が抱える問題を解決する材料に成り得ると考えています。



抗菌性の創傷被覆材は10 年以内の製品化を目指す!

  機能性高分子の多彩な可能性
抗菌性を有する創傷被覆材については、すでにプロトタイプが完成しています。現在は、物性評価や既製品との比較研究を学生とともに進めています。今後は特許取得や論文・学会発表などのマイルストーン( 中間目標)をクリアしながら、医工連携のもと臨床試験にも着手する予定です。10 年以内の製品化を目指しており、プロジェクトの未来に胸が高鳴ります。創傷被覆材以外にも、機能性高分子を用いた研究を進めています。例えば、がん組織を光らせることができる極小のカプセルです。カプセルはウイルスと同じくらいの大きさである100 nm 程度(1 nm= 10億分の1 m )で血管内を通ることができます。我々はこの極小カプセルに機能性を簡便に付与できるカプセル調製キットを開発しました。機能性としてがん組織への集積などを選択することができます。カプセル内に薬を内包することもできるので、診断と治療を同時に行えることが期待されます。また、機能性高分子は環境問題への応用も可能です。私たちはごく最近、本学の有機化学・医療品化学研究室との共同研究のもと、迅速に分解するプラスチックを開発しました。適切な条件がそろえば1日ほどで分解するため、生物濃縮などマイクロプラスチックがもつ問題を解決できるかもしれません。世の中にないものやシステムをつくることはとても楽しいです。

「楽しい」を社会貢献につなげよう
研究を進める上で、学生の未来についても考えています。まずは研究を楽しんでほしいです。研究を進めていくと「なぜ?」と疑問を持つことが多くなります。それは微妙な変化を感知する能力で、これを通して会話や議論をしたり季節の変化を感じたりすることは人生の豊かさにつながると思います。また、研究は様々な人々との連携が欠かせません。共同研究や論文発表、学会、特許出願、周辺住民への公開講義、他分野の情報収集などから得られるコミュニケーション力や視野の広さ、未知の局面にも対応できる力なども伸ばせるように工夫しています。長期的なプロジェクトを遂行するためには、優れた計画と記録が必要です。研究室に所属する学生たちには白衣と保護メガネ、そして実験ノートを渡します。実験ノートに記録した内容は論文や特許を作成する際の証拠になります。実験を振り返る上でも重要であり、後日実験ノートをめくっているうちに新しいアイディアをひらめくこともあります。また、自身の研究と他分野との融合を意識してほしいと思います。実行するには他分野にも積極的に目を向けて学び、いろいろな世界を知っておくことが大切です。幅広い知識と学び方を理解していれば、AI やIoT、経済学などの別分野であっても短い期間で一定のレベルに達することができます。将来は高分子化学×バイオマテリアル×AI×経済学を理解する研究者など、世界でもそう多くない研究者のひとりになれるかもしれません。研究を通し、人生を楽しみ社会貢献できる人物へと成長してほしいです。
 

 
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