行列

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行列は、数等を縦横に並べた表のようなもので、横の並びを行、縦の並びを列という。行数、列数は様々だ。

行列の和と差は、対応する位置の数の加減となる。従って、行数と列数の一致する行列同士でないと足し算、引き算は出来ない。

行列全体に一つの数を掛ける事が出来る。各成分に平等に掛けられる。これを行列のスカラー倍という。

行列の積は、以下のような計算が基本となる。左側は行(横の並び)、右側は列(縦の並び)の組の同じ順番の数同士を掛けたものを足す。

このような演算をするので、左側の行(横の並び)の要素数(列の数)と、右側の列(縦の並び)の要素数(行の数)が等しくなければ、行列の掛け算は行えない。
逆に言えば、ここが一致すれば、縦横の数の違う行列同士でも積は作れる。

行列の積の結果は、縦に左の行数、横に右の列数の要素が用意される。そして、例えば左の2行目と右の3列目の積は、結果の2行目3列目に配置される。
m行k列の左の行列と、k行n列の右の行列の積は、m行n列という事になる。

行列の積の意味は様々に考えられるが、一つはn次元空間上の或る点を別の位置に移す事を表現しているとも考えられる。
x、yが二次元平面上のx座標、y座標を示すとすると、ここに在る点は、左に在る行列によって、x座標=ax+by、y座標=cx+dyの位置に動く事になる。
下の例だと、四次元空間上に在った点が二次元空間の或る位置に移される事になる。行列は次元(時空?)を超える計算と言う事も出来る(実際、物理学では必須である)。

行列を一つの記号A、等で表す事も多い(大文字を使う)。また、間の×等は・とか省略される事も多い。
行列の積では一般に、交換法則は成り立たない(成り立つ場合もある)。しかし、(2)のような結合法則、(3)(4)のような分配法則は成り立つ。

(3)(4)から、以下のような計算になる。積の左右の関係を保つ必要がある。また、或る行列が定数倍されている場合、積の仕組みから、その定数はそのまま積の結果にも掛かるので、一番前に持って来れる。

結合法則が成り立つので、順番さえ入換えなければ(交換法則は成り立たないので)、どのような順番で計算してもよく、簡単になる所から始められる。

この法則を利用すれば、以下のような行列の積のn乗等も、簡単に計算出来る場合がある。行列Bとその逆行列が並ぶところは単位行列となって省略出来るので、(4.3)の結果になる。

行数と列数の等しい行列を正方行列という。
任意の正方行列Aに対し、AE=A、EA=A、つまり左から掛けても右から掛けても変えないEのような行列を、単位行列という(Iと書く場合も多い)。
単位行列も正方行列で、行数列数に係らず、左上から右下への対角線の位置が1、後の要素は0となる。
2行2列の簡単な場合で、積の計算手順に従って確かめてみると成り立っている事が分かる。

何故わざわざ単位行列を考えるのか、値を変えない行列を定義する意味の一つは、逆行列を考えられる事にある。
行列同士の割り算は無い。しかし、任意の正方行列Aに掛けた結果が単位行列になる行列を、Aの逆行列といい、A^-1(Aの右上に-1を付ける)と書く。
2行2列の場合の逆行列は、以下のようになる。左上と右下の要素を入換え、右上と左下の要素は-を掛け、各要素を左上×右下-右上×左下で算出した値で割る。

3行3列以上の逆行列は導出が煩雑になるので、とりあえず2行2列だけを考える。
ad-bcが0になる場合は、逆行列は存在しないとする。このad-bcは、行列式と呼ばれ、行列をAとすると、|A|とかdetAとか書かれる。
実際に逆行列になっているかを確かめると、以下のようになる。

逆行列を持つ行列を、正則行列という。逆行列は右から掛けても以下のように単位行列を作る。

逆行列を計算に用いるときは、事前に必ず行列式がゼロでない事(その逆行列が存在する事)を確かめる必要がある。
以下の(1)~(3)が成り立つとき、逆行列を用いて、行列Qを求める。

a>0から、a(a+2)≠0となり、Aの逆行列は存在する。(2)の両辺にAの逆行列を掛け、(4)とする。(4)×a-(3)を計算すると、行列Pを消去でき、Aの定義等からQが求まる。

行列は、少し計算してみて、ゼロ行列や単位行列が出来る事が分かれば、これを利用して計算が非常に簡単になる。
以下の(1)において、k、nを正整数とするとき、(2)を求めよ。

A_kを(3)のように置くと、以下の関係が分かる。二次が一次と等しく、ゼロ行列などが出来る事が分かる。

(2)を求めるので、(3)の形のものを繰り返し掛ける事になる。kの値は度外視して、(4)のように置き、一回掛け算してみると、上記の関係から(5)の簡単な形になる事が分かる。

さらに、(6)のようにもうひとつ掛ける事を考えると、ab、cdを一つの定数と考えれば、(4)の結果から、(7)となる事が分かる。

上記の考察から、(2)は以下のようになる(その後、一つの行列に纏めて出来るだけ式を簡単にする)。

行列は其々の値によってはn回掛けた値が、nを含む簡単な式で求められる場合がある。以下のBに対し、Aを左側からn回掛けた場合は以下のようになる。

なお、原点を含む以下の4点から成る平行四辺形の面積Sは、(1)と置いた行列Aの行列式detAの絶対値となる。

(2)のようにベクトルを置くと、(3)のようになる(|ab|はベクトルabの長さ)。点(c、d)からベクトルabへの垂線の長さhは(4)のように置け、三角関数の展開公式等を用いて整理すると、detAとなる事が分かる(面積は非負なので絶対値が付く)。