記号論理

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命題と推論を形式的に扱う方法は形式論理(記号論理)と呼ばれ、その最も基本的な論理が概略を以下に紹介する命題論理となる。
命題は、複合命題という形で複雑にしていく事が出来る。また、或る命題から推論によって、別の命題を導く事が出来る。
命題論理を拡張した述語論理の他、様相論理に代表される非古典論理等の様々な形式論理もある。また、帰納や類推のような、確実性の保証されていない推論もある。

述語論理

非古典論理

不確実な推論

命題(proposition)と論理式

真偽を決定出来る記号列(通常は文や数式等)を、「命題」と呼ぶ。「今日は7月29日だ」は真偽を決定出来る命題だが、「今日は何の日でしたっけ?」は何の命題でもない。
一つの命題(例えば「今日は火曜日だ」等)を、一つの記号p等で表し、これを命題記号という。
命題記号は其々、真(正しい、True)か偽(間違っている、False)の値を持ち、これを論理定数という。値は真偽のいずれかで、真でも偽でもある事はない。
命題記号と下記に示す論理記号が組み合わさったものを、論理式という。論理式も論理定数を持つ。
それ以上分割出来ない命題を原子(要素)命題と呼ぶ。原始命題(p)と原始命題の否定(¬p)を、リテラルという。
原子命題の(常識等の背景知識に照らして)真偽を決める事を「解釈」という(解釈が異なれば真偽が変わる事もある)。
或る論理式から、別の論理式を導き出す事を「推論」という。

論理結合子(論理記号)

命題を否定、結合する概念である「否定」「かつ」「または」「ならば」を表す記号。否定の記号は右側に命題を取るだけでよいが、他の記号は左右に命題がなければならない。
命題pの否定は、¬pと表記する。pが真の時、¬pは偽、pが偽の時、¬pは真となる。
「かつ」は連言又は論理積等と呼ばれ、記号は∧。複合命題p∧qは、pとqの双方が真の時のみ、真となる。どちらか又は両方が偽の場合は、p∧qも偽となる。
「または」は選言又は論理和等と呼ばれ、記号は∨となる。複合命題p∨qは、pかqのどちらか又は両方が真であれば、真となる。両方偽の場合のみ、p∨qも偽となる。
「ならば」は含意と呼ばれ、記号は→となる。複合命題p→qは、pが真でqが偽ならば偽、pが真でpが真なら、真となる。→の左側(ここではp)を前件、右側(q)を後件という。
pが偽の場合は、qの真偽に係らず、p→qは真として扱う(p→q⇔¬(p∧¬q)である事からも明らかとなる)。
これらを真理値表で示すと、以下のようになる。

全ての可能な解釈は、pが1と0の場合、qが1と0の場合の組合せなので、ここでは4通りだ。同じ段が、同じ解釈の下で、其々の論理式がどんな論理定数を持つか示している。
ここではTやFより見て区別しやすいという理由で、1(真)、0(偽)の表示を用いる。
其々の論理式の否定は、1と0を反転させればよい。連言は1と0の掛け算、選言は1と0の足し算となる(従って、p∧¬qは、p(水色)の各段の真偽値(論理定数の値)と¬q(黄色)の各段の真偽値を掛ければよい)。
p→qの真偽値は、これが¬(p∧¬q)と等しい事を利用して、同じ値とする。従って、p→qは、pが偽であれば、qの真偽に係らず真になる。
p→qの論理式が意味するのは、pとqの真偽に係らず、pでありながらqでない場合(p∧¬q)は無い、という事だ。従って、その否定(¬(p∧¬q))と同じ事(同値、等価)になる。
或いは、p→qの定義が(¬(p∧¬q))だと考えてもよいだろう。
この→の形から、∧の形に変換する事は、証明の過程で重要な役割を果たす。

結合力

(p→q)∧(q→p)の関係をpとqは同値であるといい、p⇔qと記述される(⇔も論理記号となる)。
ここで()は数式と同様、論理結合の優先(括弧内が先に結合される。括弧が重なる場合は、内側から先に結合する)を示す。
単一の論理結合子の間では¬(否定)は他よりも優先的に結合し、¬p∧qは「pの否定かつq」を示し、「pかつqの否定」ではない(後の場合は¬(p∧q)となる)。
否定以外の論理結合子の結合の優先度(結合力)は全て等しい。

逆命題・裏命題・対偶

含意を含む命題p→qに対し、q→pを逆命題という。前件と後件を否定した¬p→¬qを、裏命題という。
或る命題の逆命題の裏命題を、元の命題の「対偶」という。或る命題の裏命題の逆命題も、元の命題の「対偶」となる。
命題pと、pの対偶は同値となる。

二種類の選言

自然言語は論理的に複数の意味に取れる場合があり、日本語で「pまたはq」と言う場合、通常の選言と排他的選言の二つの意味を取り得る(どちらかは表記だけでは断定出来ない)。
排他的選言とは、pとqの双方が真になる事はない選言で、例えば「彼の血液型はA型またはB型(のどちらか)だ」といった内容が該当する。
これを論理式で正式に表現すると、(p∨q)∧¬(p∧q)となる。
これに対し、通常の選言p∨qは両立的選言と呼ばれ、「Aさん、またはBさんは男性だ」と言う場合、双方が男性でもこの文が偽にならない例が該当する。

二種類の含意

日本語の「pならばq」も、通常の含意の他に、別の意味を取り得る。
同値及び¬p→¬qも含んでいるニュアンスだ。「50点以上ならば合格」「暑ければ冷房を入れる」の場合、「合格→50点以上」「冷房を入れる→暑い」の逆命題の他、「50点以上でなければ不合格」「暑くなければ冷房を入れない」という裏命題も言外に含んでいると取れる。
これを論理式で書くと、(p⇔q)∧(¬p→¬q)となる。

複合命題の生成

原子命題から、以下の法則によって、入れ子的に複数の命題を組み合わせた複合命題を作って行く事が出来る。
・原子命題は論理式である。
・pが論理式であれば、¬pも論理式である。
・pとqが論理式ならば、p∧q、p∨q、p→q、p⇔qはいずれも論理式となる。

代表的な恒真命題

原子命題の真偽(解釈の在り方)に係らず、常(恒)に真となる命題を特に恒真命題(トートロジー)という。
これは、⇔の無い恒真式は、全ての解釈の組合せ(真理値表の全ての段)について、真になる(⇔のある恒真式は、⇔の左右の論理式の真偽値が、全ての段について等しくなる)場合だ。
恒真式によって、或る命題の書き換え(表現の変換)も可能になる。
既に出ている、(p→q)⇔¬(p∧¬q)は恒真式だ。また、(p→q)⇔(¬p∨q)も恒真となる。当然のように思える例だが、p⇔pも恒真となる(同一律)。
p∧¬pは常に偽(恒偽=充足不能)であるため、¬(p∧¬p)は逆に恒真となる(矛盾律)。p∨¬pも恒真(排中律)だ。
以下に排中律、矛盾律が、各段について全て真になる様子を示す。

また、¬(p∧q)⇔(¬p∨¬q)と、¬(p∨q)⇔(¬p∧¬q)の二つも恒真となる(有名なド・モルガンの法則)。
以下に、其々、⇔の左右が真理値表の各段に於いて等しい事を示す(⇔の左右にある論理式を同系色とした)。

否定の否定が元に戻る、p⇔¬¬pも論理学的には恒真だ(婉曲語法というレトリックの世界では、違うニュアンスも帯びる。「肉は好きだ≠肉は好きでなくはない」)。
p∨(p∧q)⇔p、p∧(p∨q)⇔p(吸収律)も其々恒真だ。
p∧q⇔q∧p、p∨q⇔q∨p(交換律)、p∧(q∧r)⇔(p∧q)∧r、p∨(q∨r)⇔(p∨q)∨r(結合律)も其々恒真だ。
p∧(q∨r)⇔(p∧q)∨(p∧r)、p∨(q∧r)⇔(p∨q)∧(p∨r)(分配律)も其々恒真だ。

論理的帰結

論理式の集合{p1,p2,...,pn}があり、p1∧p2∧...∧pnが真(全てが真)であるとき、qも真になれば、qは{p1,p2,...,pn}の論理的帰結であるという。演繹推論は論理的帰結を導く。

肯定式と否定式等による推論

恒真式は、構成する命題の解釈の如何に係らず、常に推論が成立するが、以下は或る解釈の元で成り立つ推論である。
肯定式(modus ponens)はp→qと、pが真である事が分かっているとき、qを真であると推論する。
否定式(modus tollens)はp→qと、¬qが真である事が分かっているとき、¬pを真であると推論する。
p∧qが真である事が分かっているとき、pとqは真であると推論する(And elimination)。
pとqが真である事がわかっているとき、p∧qは真であると推論する(And introduction)。

推移律による推論(三段論法)

((p⇔q)∧(q⇔o))が真である事が分かっているとき、(p⇔o)を真であると推論するのが推移律で、三段論法と呼ばれる事も多い。

IF-THENルール

IF-THENルールは、論理式のp→qをシステムで実行するための知識表現。A,B→Cと条件(前件)部が複数であれば、既に分かっている事実の中に条件部の全てがある場合に初めて、そのルールが実行される。帰結(後件)部が複数の場合もある(A→B,C等)。
前向き推論(forward reasoning)では、事実は最初Aだけだが、それによりルールA→Bが実行され、新事実Bが追加される(赤字部分)。2回目の推論では、事実A,Bから実行出来るA,B→Cが行われ、新事実Cが追加される。事実からルールの実行(推論)が繰り返され、事実(知識)が追加されていく。
後向き推論(backward reasoning)は、事実とルールを使って仮説(ゴール:G)の真偽を検証する。1回目で仮説が事実にあれば、真として終了する。この場合ないので、仮説を帰結部に持つB→Cが逆向きに実行され、新たな仮説G(B)を得る。2回目以降は前回の推論で得た仮説と事実を帰結部に持つルールが実行され、仮説が更新される。最新の仮説の全てが事実にあれば、最初の仮説は真となる。

前向き推論と後向き推論の図解

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