社会情報

  1. メディアリテラシー
  2. 調査と分析

  情報の質,量,処理方法,伝達方法などの変化は,社会に大きな影響を及ぼします.それを常に把握し,情報学の他分野に適切なフィードバックをかけることが「社会情報」分野の大きな役割です.それと共に,社会を構成する人間自身に対しても,情報化社会におけるあり方などに関する提言が必要です.そのような意味で,情報学における「社会情報」分野の役割は非常に大きいと言えます.

  1. メディアリテラシー

      かつて,天変地異などを神の怒りと解釈し,生け贄や祭礼などによってそれを鎮めようとしてきました.現在の人間から見れば,環境からの情報を誤って解釈していたといえます.現在では,様々な天変地異に対して人間の力でそれを押さえつけようとしています.しかしながら,例えば異常気象などは環境からの警告メッセージなのかもしれません.我々はそれらの情報を正しき解釈しているといえるのでしょうか.少なくとも昔の人間を笑えるような状態ではないと思います.

      更に,現在では,雑誌,新聞,テレビ,インターネットなど,様々なメディアを通して,大量の情報を容易に得ることができます.その中には,役に立つ情報,役に立たない情報,正しい情報,間違った情報,不確かな情報,など,様々なものが含まれています.たとえば,新聞など,マスメディアが発信する情報は,以下に示すように,常に正しく公正中立的なものであるとは限りません.しかも,その影響力は強大です.

    1. ゆがめられた情報(個人レベルで行われる情報操作)
      • 記者の能力不足,理解不足による間違い記事
      • 盗作記事やねつ造記事
      • 合成写真

    2. ゆがめられた情報(組織レベルで行われる情報操作)
      • メーカーの製品で問題
        → メーカーから新聞社の広報担当部局に依頼
      • 大スポンサー会社におけるスキャンダル
      • 各地で行われる催事
        → 地域に強い報道機関が営業的に入り込む
        → 主催者側から様々な問題提起や注文

    3. マスメディアの力
      • 松本サリン事件
      • 窃盗事件の犯人と報道
        → 無実 → 訂正報道はほとんど無し → 退職,転居
      • 選挙に対する世論調査の結果
        → 優勢,当落線上,・・・

      そこで,様々な情報を選別する能力,つまり,メディアリテラシーが必要になります(「メディア情報論」).メディアリテラシイーとは,

    「メディアが発信する情報を,正確かつ批判的に評価し,さらには,自分の考えを形成していく能力」

    といえます.この能力がなければ,ますます高度化する情報化社会において,情報に振り回されるだけで,情報を利用できなくなります.

      ここで,2 つの資料を見てみましょう.「文章1」は,ある演説の内容をそのまま記したものです.「文章2」は,その演説に対する新聞記事です.はたして,新聞が,中立的な立場からその内容を正しく伝えていると言えるでしょうか.

    文章1 亀井氏に対する石原都知事の応援演説(2003/9/10,名古屋)

      いまの亀井候補が一言言った,北朝鮮とのかかわりの問題だって,何やってんですか.田中均というやつ,今度爆弾しかけられて,あったり前の話だ.政治家に言わずに,いるかいないかわからないミスターXと私は交渉したといって,向こうのいいなりになる.小泉総理がですね,これはけしからん問題だ,少し圧力をかけようと言ったら,その文言を声明の中から外そうとする.その役人が1人で仕切って,北朝鮮と渡り合えるわけがない.だったら私たちは,これだけの経済力をもってミサイルを作りいろんなことをやっていた北朝鮮に,経済的な抑制をする制裁をする.アメリカだってアルカイダに貿易センタービルやられた時に,アルカイダの家族からそういう資金を一応封鎖した.日本はなんでそれができないのかわからない.私は小泉総理に言ったら小泉さんもあまりはっきり言わない.あとの2人の候補もこの問題について全然コメントしない.我々の同胞が状況証拠から言ったら150人拉致されて帰ってこない.ほとんど死んでるでしょう.その国に私たちはわけのわからない金をつぎ込んで,いまでも万景峰号がやってきていろんな物を持って帰る.古くなった自転車持って帰る.その台座使ったりなんかしながら,機関銃作ったりミサイル作ったりしてるそうです.アメリカの議会で向こうの関係者がそう証言した.日本を火の海にしてやる.日本国を火の海にしてやると彼らは豪語して,100発あるかないかわからんけど,ミサイルのほとんどは日本の技術の部品でできている.こんなばかな関係をですね.しかも向こうの大将は頭下げながら悪いことをした,私の責任じゃない,おやじがやったんで.実は私たちが日本人を拉致しましたと言って,5人だけ返して子どもを返さない.その時になんで我々は,子どもを返さないなら経済制裁するぞということを正面向かって言えないんだ.なぜ言えない.こういう候補が出てこない.私は亀井静香,みなさんの前でいま言ったけれども,もしこれをあなたが裏切ったら私はあなたを支持しない.亀井の倒閣運動をする.

    文章2 朝日新聞の記事(2003/09/11,朝刊 1面)

    見出し: 「爆弾仕掛けられ当然」/田中審議官宅 発火物事件/石原都知事が発言
    内容: 外務省の田中均外務審議官の自宅で発火物とみられる不審物が見つかった事件について,石原慎太郎東京都知事は2003年9月10日午後,「爆弾を仕掛けられて,当ったり前の話だ.いるか,いないかわからないミスターXと交渉したと言って,向こう(北朝鮮)の言いなりになる」と発言した.
      石原知事は,自民党総裁選候補の亀井静香前政調会長の応援のため,名古屋市内での街頭演説に亀井氏とともに立ち,こうした発言をした.亀井氏が演説で北朝鮮に経済制裁を加えるべきだと述べたのに関連して,田中氏への批判を展開.田中氏が5月の日米首脳会談の際の説明資料から「圧力」の文言を削除したとされる問題も指摘し,「その役人が1人で仕切って,北朝鮮と渡り合えるはずがない」などと批判した.
      さらに石原氏は「状況証拠から言ったら150人が拉致されて帰ってこない.ほとんど死んでるでしょう」とも発言.そのうえで「(拉致被害者の)子どもを(日本に)帰さないなら経済制裁するぞ,ということを正面向かってなぜ言えない」と主張した.
      石原知事の発言について,亀井氏は街頭演説後,記者団に「表現方法としてそういう言い方をしたのだろうけど,まともな意味で『(爆発物を仕掛けられて)当たり前』と言ったんじゃない」とかばった.

  2. 調査と分析

      メディアリテラシーのためにも,また,一般的に情報を利用するためには,得られた情報を分析する必要があります(「情報分析論」).また,場合によっては,既に存在する情報を利用するだけではなく,アンケートなどによって,積極的に情報を生成・収集する必要もあります(「社会調査法」).

      アンケートを実施した後は,「情報学の基礎理論」分野で述べたような統計分析が必要になります.しかし,それ以前に,どのようにしてアンケートを作成するかという大きな問題があります.アンケート結果は,一般に,その内容,方法等によって,結果が異なってきます.たとえば,以下に示すような項目は,アンケート結果に強い影響を与えます.そのため,目的の結果を得るためのアンケートを作成することも十分可能です.

    1. 有識者・権威者の意見
      例: この問題について有識者は~と考えていますが,あなたはどう思いますか
        特に,回答者にとって難しい質問,自分の意見をはっきり持っていないような場合,有識者の回答と同じ回答をしがちです.

    2. 資料の添付
        回答者にとって難しい質問の場合は,参考資料を添付せざるを得ない場合があります.どのような資料を添付するかによって,回答結果は大きく異なってきます.

    3. 質問の順序
      例: 1) ~のような運動が行われています.この運動についてどのように思いますか.
         2) あなたはこの運動に参加しますか.
        もし,この運動が一般的に良いものであった場合,多くの人が質問 1) に対して「良い」と解答するはずです.「良い」と答えた後では,質問 2) に対して「いいえ」と答えにくくなります.従って,質問 2) を先に行い,質問 1) を後ろの方で行った場合とは,異なった結果が得られがちです.また,
      例1: ~運動は非常にすばらしいものです.あなたはこの運動に参加しますか.
      例2: 戦争は忌むべき行為です.あなたは自衛隊をどのように思いますか.
      のような質問も,同じような効果があるはずです.

    4. 質問への答えやすさ
        面倒な回答を要求する場合は,その選択肢を避けがちです.

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