2018年5月14日 授業風景

作ったオブジェを観察する

図学では、今、オブジェの模型を制作して、その模型を実測して、図面化する、という授業を行っています。模型は、断熱材として使われるスタイロフォームをヒートカッターで切断することによって製作します。オブジェは3つの異なる大きさの直方体を組み合わせて作ります。それぞれの直方体の大きさやプロポーションは各自、自由に設定します。

ヒートカッターと模型材料

オブジェの図面を描く

図面は平面図(上面図)、立面図(側面図)、アクソノメトリック図(斜投象図)をA2サイズのケント紙にシャープペンを使って描きます。次週は、太陽光線を設定し、図面に陰影を作図し、奥行きを表現します。陰影を施すことで、3次元の立体を2次元の紙の上で立体感をもって表現することができます。

マレーヴィッチ「アルキテクトニカ」1920年代

上の写真はロシアの画家マレーヴィッチが1920年代に制作したオブジェです。多数の直方体が組み合わされています。マレーヴィッチは1910年代にシュプレマティスム(絶対主義)という美術の前衛活動を展開します。そして1920年代には、その絶対主義が絵画から立体に拡張されたわけです。この動きは建築をも巻き込んで、ロシア構成主義につながってゆきます。そしてロシア構成主義は、いわゆる近代建築の理論的基盤を形作ってゆきます。

ドゥースブルグ、ファン・エーステレン「個人住宅」1923年

上の図はドゥースブルグとファン・エーステレンによるアクソノメトリック図です。彼らはオランダでの建築前衛運動「デ・スティル」を主導しました。彼らは、それまでの透視図に代わってアクソノメトリック図こそが空間の本質を表現するものだと主張しました。建築史家の杉本俊多氏は、それを図法革命と呼んでいます。私は、透視図からアクソノメトリック図への移行が第1の図法革命であるなら、1980年代のコンピュータを使った作図法への移行は第2の図法革命ではなかったかと思っています。

1000個の直方体によるオブジェ

図は1000個の直方体を組み合わせたオブジェのコンピュータ・グラフィックスです。ここでは1000個の直方体を乱数を使ってランダムに配置しています。それぞれの大きさやプロポーションもランダムです。1000個の直方体が織りなす陰影を作図することは、手作業ではとても行えません。3個の直方体が作り出す陰影でさえ、かなり複雑です。コンピュータはそれを数分でやってのけます。私は、コンピュータの導入によって、それまでの線を引くという作図から、直方体というオブジェクトを3次元的に配置するという方向に建築の設計が移行したと考えます。これは第2の図法革命だと思います。