音楽の認知心理学

はじめまして。総合情報学部人間情報デザイン学科の松永理恵です。

私は専門は,認知科学,特に音楽の認知心理学です。「人間がどのようにして音の並びを”音楽”として知覚しているのか」という疑問を,心理学実験,脳科学実験,パソコンによるシミュレーション実験を用いて調べています。

今日は,私が最近取り組んでいる研究テーマの1つを,ごく簡単に紹介したいと思います。

私たち現代日本人は主に西洋音楽に慣れ親しんでいます。それと同時に,地域の行事などを通して日本伝統音楽に触れる機会もあります。この経験から,現代の日本人は異なる2種類の音楽,西洋音楽と日本伝統音楽の両方を享受する二重音楽的な耳を獲得します。

では,私たちの脳はどうやって西洋音楽と日本伝統音楽を聞き分けているのでしょうか。私がこれまでに行った研究からは,西洋音楽を処理する脳の領域と日本伝統音楽のそれとは少しずれていることが明らかになりました[1]。また,もともと馴染みの薄い日本伝統音楽を経験すればするほど西洋音楽と日本伝統音楽それぞれを処理する脳の領域のずれは小さくなること,そして,このような脳活動の変化の仕方は,バイリンガルが第2言語を学んでいくことによって観察される脳活動の変化の仕方と共通していることが分かりました[2]。この知見は,最近の音楽認知心理学領域で活発に議論されている「言語と音楽は神経資源を共有しているのか(e.g., Patel, 2008[3])」という問いに対して基礎的資料を提供するものといえます。

[1]Matsunaga, R., Yokosawa, K., & Abe, J. (2012). Magnetoencephalography evidence for different brain subregions serving two musical cultures. Neuropsychologia, 50, 3218-3227.
[2]Matsunaga,R., Yokosawa,K., & Abe, J. (2014). Functional modulations in brain activity for the first and second music:A comparison of high- and low-proficiency bimusicals. Neuropsychlogia, 54, 1-10
[3]Patel, A. (2008). Music, Language, and the Brain. Oxford: Oxford University Press.

次回は,「音楽の普遍的特性と文化特殊的な特性」という別の研究テーマについて紹介したいと思います。世界には様々な音楽が存在しますが,それぞれの音楽をよく見ると,ドで始まってドで終わるなど共通する特徴があります。それらの特徴は,実は,人間が生まれながらにもっている知覚的な制約を反映したものである可能性が高い・・・というようなお話です。

なお,12月20日に開催された第1回SISTコロキウムにおいて「音痴でもなぜ音楽を楽しめるのか?音楽の認知心理学への招待」という講演を行いました。そちらに関して興味がある方はここのページを訪れてみて下さい。