【人間情報デザイン学科 宮岡研究室】 3Dプリンタで触覚刺激を作る

 宮岡研究室では,10 年以上にわたって触覚について研究してきました.最近は“触覚の錯覚”(錯触)の研究をしています.視覚の錯覚のことを錯視と言いますが,ミュラーリエル錯視など知っている人も多いと思います.ミュラーリエル錯視に典型的に見られるように,感覚の錯覚では,提示された刺激を本来の物理的特性とは異なっているように感じます.なぜ錯覚が起こるのかを研究することにより,神経系の働きの解明が進むと期待されます.また,バーチャルリアリティなどへの応用も考えられています.

 さて,錯覚を研究する場合は,錯覚を起こさせる刺激の作成が重要となりますが,触覚ではこれがなかなか難しい.最近は3Dプリンタがブームですが,細かい図形を精度よく作成できる3Dプリンタは数百万円以上するので,買えないと思っていました.ところが,2013年の秋に,非常に精度よく刺激が作成できる比較的安価な3DプリンタがMiiCraftから発売されました.そこで,このプリンタを購入し,錯触刺激を作ってみることにしました.

図1 MiiCraftの外観

図1 MiiCraftの外観

  
図2 扉を開けたところ

図2 扉を開けたところ

 図1がMiiCraftの3Dプリンタの外観です.両側の扉を開けると,図2のような内部が見えます.図2の左側は刺激を作成する部分で,液体状の樹脂をゆっくり固めながら刺激を作成していきます.右側は,出来た刺激に紫外線を当て二次硬化させる部分です.出来た三次元図形の一例を図3に示します.このボールの直径は23.5 mm,一つ一つの網目の穴の直径は1 mmです.図形が,精度よく仕上がっていることがわかります.MiiCraftでは,0.05 mmの精度で図形を作成することが出来ます.

図3 作成した図形の例

図3 作成した図形の例

 つぎに,この3Dプリンタで錯触刺激を作っているところをお見せします(図4).これは,fish bone錯触(魚の骨錯触)と名付けられた,最近発見された錯触を体験するための刺激です.図4のパターンは魚の骨のように見えます.この“骨”の厚みはどの部分でも同じなのですが,背骨に沿って指を動かすと,背骨が凹んで感じられます.これがfish bone錯触です.そして,この錯触がどの程度はっきり感じられるかは,背骨から左右に伸びる骨がどのような間隔で並んでいるかで決まります.こうした刺激を,精度よく何種類も作るのに3Dプリンタは適しています,これから,様々な錯触刺激を作成して錯触実験を行い,人間の神経情報処理の一端を明らかにしたいと思っています.

図4 Fish bone錯触刺激の作成

図4 Fish bone錯触刺激の作成

 なお,4月19日(土)~5月18日(日)に静岡科学館る・く・るで「みる・きく・さわるのふしぎ展」が開催されます.宮岡研究室からも出展しますので,時間がありましたらお立ち寄りください.