【人間情報デザイン学科 三原康司 】 サービスとサービスロボットの心

 サービスには想定外のことが起こりやすい。そして、想定外に対処するためには、サービスを提供する人がその想定外に対応できるように、従業員教育が重要である、と言われています。しかし、人間の能力には限界があり、人それぞれでまちまちです。ですから、人の能力だけで全ての事象に対応するのは限界があり、品質のばらつきが発生します。そして、人の能力に依存することを前提としたサービス設計は、サービス作業の流れだけを示すような設計であり、顧客価値を向上させることを目的とした設計が難しくなります。そこでサービスの自動化、サービスロボットなどの開発が進んでいます。その設計のためには、そのための新たなサービス設計理論を構築する必要があります。

 サービスでは、コア・核となり中心であるサービスをコアサービスといいます。例えばマッサージであればマッサージそのものがコアサービス、待合室や接客は付随サービスといいます。コアサービス以外で顧客価値を高める要因を2つ考えましょう。1)想定外のできごと(客の要望、他の客の問題、設備のトラブル、など)が少ない、2)品質のばらつきが小さい,の2つがあります。これを達成するためには、1)多くのコトを想定し、対策機能を用意する、2)できる限り人間の能力に頼らないようにする、方法があります。
 これらの対応のために、サービスの想定外要因を研究し3つの要因を明確化しました。①サービスへのインプットには必ず人が存在し、同じ人がアウトプットされること、②サービスでは、必ず顧客とサービス提供側の双方向のやり取りがあること、③サービスにはその他のシステムとは異なる環境要因があること、の3つです。

 さて、ここで少し話がかわりますが、最近人型ロボットの開発が盛んになっています。 大阪大学・石黒教授は、ロボットに心を持たせる、と言っていました。「心」の定義が必要ですが、例えば、人はペアでダンスを踊れる、これはある意味相手に対する心を持って踊れるからだと解釈すると、サービスのためのロボットに必要なセンサは、人間の心にあたる機能だということでしょう。先の3つの想定外に対応するような理想のサービスシステムは、人に価値を認識してもらい、満足してもらう機能(サブシステム)を持つシステムであるといえます。世の中一般には、窓ふき、清掃、荷物運びなどのロボットをサービスロボットと称していますが、私の定義では、これらはサービスロボットではなく、作業ロボットです。もしも、これらのロボットの作業あるいは作業結果を、それを依頼した顧客に価値を認識してもらい、満足してもらう過程が設計されていれば、その作業ロボットを含む大きなシステムは、サービスシステムと呼べます。しかし、作業だけをしているロボットはあくまでも作業ロボットです。

 一般的に、産業用ロボットとサービスロボットの相違は、何か物理的なモノを作るためのロボットか、モノを作り出さない無形の付加価値を生むロボット、としているようです。これは産業分類上の“サービス”に準じているようです。しかし、良く考えてみてください。作業だけで人に価値を認識してもらい、満足を与えられるでしょうか。顧客は、その作業の価値を認識して初めて、満足を感じ、その作業に価値を感じるでしょう。

 「ロボットに心を持たせる」とは、こういうことも含んでいるように思えます。そう考えると、これからの製品設計の目標は、「製品に心を持たせる」ことではないかと思います。今後の製品開発の大きな課題ですね。