県内高等学校のホームページでの校則の公開状況の調査結果について

研究活動

県内高等学校のホームページでの校則の公開状況の調査結果について

2021年末の公開率は3.3%、生徒指導提要の改訂により公開促進を期待

ニュースリリース(PDF)

【研究のポイント】
・静岡県の高等学校における校則の学校ホームページでの公開状況を2021年11月から12月にかけて質問紙調査。
・県内の高等学校では、学校ホームページを利用した校則の公開がほとんど行われていない状況にあること、校則は在校生向けの内部情報として捉えられていたことが判明。
・12年ぶりとなる生徒指導提要の改訂案が2022年(令和4年)8月に公表され、昨今の「ブラック校則」問題などを背景に、校則をホームページ等で公開することの意義が明確化された。これによって,県内の高等学校においても、学校ホームページを利用した校則の情報公開が進むことが期待される。

【概要】
静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科の本多明生准教授(専門:心理学)、同学科の尾形加奈恵さん(2021年度卒業生)は、静岡県の高等学校における校則の学校ホームページでの公開状況に関する質問紙調査を行いました。
調査は、県内の高等学校134校(分校5校は除く)に、2021111日に調査票を郵送する形式で行われました。同年1217日まで返送された60校(回収率44.8%:公立校37校、私立校21校、未回答2校)の回答を分析した結果、(1)ホームページを利用した校則の公開を行っていた学校は2校(回答校の3.3%)、(2)今後公開を行う予定がある学校は6校、(3)校則の公開が行われていない理由で有意に多く選択された項目は「在校生に校則を記した資料を配布しているため(選択率85.0%)」、「校則をホームページで公開する対象として捉えたことがないため(選択率66.7%)」、(4)校則の公開を促進する要因で最も多く選択された項目は「校則を公開する意義がこれまで以上に社会的に明らかになること(選択率58.3%)、だったことがわかりました。したがって、調査結果から、2021年末の時点では、県内の高等学校におけるホームページを利用した校則の公開がほとんど行われていない状況であること、校則は在校生向けの内部情報として捉えられていたこと、などが示唆されました。
この度、文部科学省は、12年ぶりに生徒指導提要を改訂しますが、本調査はこの動きに先行して実施されました。この改訂では、校則を公開する意義を明確化していることから、県内の高等学校においても、学校ホームページを利用した校則の情報公開が進むことが期待されます。
本研究成果は、202298日から11日に日本大学文理学部で開催された日本心理学会第86回大会にて「高等学校におけるホームページを利用した校則の情報公開状況:2021年静岡県実態調査」というタイトルで発表されました。

【背景】
昨今、一部の学校で必要かつ合理的な範囲を逸脱している校則(いわゆる「ブラック校則」)が存在するという問題が広く知られたことで、校則に関する議論が盛んになっています。
このような状況を背景に、文部科学省は、2022826日に、小中高校での生徒指導に関する教職員向けの手引書「生徒指導提要」の改訂案を公表しました。今回の改訂は12年ぶりで、校則の運用・見直しに関する大きな変化がありました。具体的には、「校則に基づく指導を行うに当たっては、校則を守らせることにばかりこだわることなく、何のために設けた決まりであるのか、教職員がその背景や理由についても理解しつつ、児童生徒が自分事としてその意味を理解して自主的に校則を守るように指導していくことが重要」で、「そのため、校則の内容については、普段から学校内外の者が参照できるように学校のホームページ等に公開しておくことや、それぞれの決まりの意義を理解し、児童生徒が主体的に校則を遵守するようになるためにも、制定した背景についても示しておくことが適切である」と改訂案の中で言及されています。
このように改訂案では、(1)校則は学校のホームページ等で公開するのが適切であること、(2)校則を公開する意義についてもはっきりと説明していること、が大きな特徴です。 

【成果】
静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科の本多明生(ほんだ あきお)准教授(専門:心理学)、同学科の尾形加奈恵(おがた かなえ)さん(2021年度卒業生)は、静岡県の高等学校における校則の学校ホームページでの公開状況に関する質問紙調査を実施しました。
調査は、県内の高等学校134校(分校5校は除く)に、2021111日に調査票を郵送する形式で行われました。調査内容は、各学校の(1)ホームページを利用した校則の公開状況、(2)今後公開を行う予定、(3)校則の公開が行われていない理由、(4)校則の公開を促進する要因、などについてでした。
同年1217日まで返送された60校の回答を分析した結果(回収率44.8%:公立校37校、私立校21校、未回答2校)、(1)ホームページを利用した校則の公開を行っている学校は2校(回答校の3.3%)、(2)今後公開を行う予定がある学校は6校、(3)校則の公開が行われていない理由で有意に多く選択された項目(1参照)は「在校生に校則を記した資料を配布しているため(選択率85.0%)」、「校則をホームページで公開する対象として捉えたことがないため(選択率66.7%)」、(4)校則の公開を促進する要因で最も多く選択された項目(2参照)は「校則を公開する意義がこれまで以上に社会的に明らかになること(選択率58.3%)、だったことがわかりました。


220913news-1.png1. ホームページを利用した校則の公開が行われていない理由(複数選択可)
220913news-2.png2. ホームページを利用した校則の公開を促進する要因(複数選択可)

したがって、調査結果から、生徒指導提要の改訂案の公表前の2021年末の時点では、(1)県内の高等学校におけるホームページを利用した校則の公開がほとんど行われていない状況にあったこと、(2)校則は在校生向けの内部情報として捉えていたこと、(3)校則を公開する意義をこれまで以上に明らかにする必要があると考えていたこと、などが示唆されました。これは高等学校では「なぜ校則は学校ホームページで公開されにくかったのか」、「どうすれば学校ホームページを利用した校則の情報公開がこれから進んでいくのか」に関する知見を提供する研究成果です。

【今後の展開】
この度、文部科学省は12年ぶりに生徒指導提要を改訂しますが、改訂案では「校則の内容については、普段から学校内外の者が参照できるように学校のホームページ等に公開」するのが適切である、と説明されています。本調査はこの動きに先行して実施されました。
一部の自治体(岐阜県等)の学校では、学校ホームページを利用した校則の公開が進んでいますが、静岡県をはじめとする、多くの自治体の学校ではこれからの課題になると考えられます。生徒指導提要の改訂によって、県内の高等学校が必要であると考えていた、学校のホームページ等で校則を公開する意義が社会的に明確化されることから、県内の高等学校においても、学校ホームページを利用した校則の情報公開がこれまで以上に進むことが期待されます。 

【発表情報】
本多明生・尾形加奈恵 (2022). 高等学校におけるホームページを利用した校則の情報公開状況: 2021年静岡県実態調査. 日本心理学会第86回大会, 202298-11, 日本大学文理学部.

【問合せ先】
(研究に関すること)
静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科
准教授 本多明生
E-mail:honda.akio.cs*sist.ac.jp (*@に置き換えてください)
(報道に関すること)
静岡理工科大学総務部社会連携課 担当:中村
TEL:0538-45-0108 E-mailshakai@sist.ac.jp

【問合せ先】
静岡理工科大学総務部社会連携課 担当:池田・中村
TEL:0538-45-0108 E-mail:shakai@sist.ac.jp