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超硬合金の金型を高速で作る次世代技術(2)


理工学部機械工学科
後藤昭弘 教授

後藤教授が思い描く未来像、それは--静岡理工科大学が地域の金型技術を支援する拠点となり、遠江(とおとうみ)と呼ばれるエリア(※6)にコスト競争力のある金型や付加価値の高い金型のメーカーが集う一大拠点「遠州デジタルモールドバレー」が形成されることです。

※6 遠江:静岡県の西部、大井川から浜名湖付近に至る地域。遠州(えんしゅう)とも呼ばれる。掛川市、磐田市、浜松市などがある


静岡県は全国でも金型生産が盛んな県であることは前回の記事でも述べたとおり。特に県西部には金型メーカーが集積しています。静岡理工科大学がそうした企業と連携し、産業の推進役になろうという構想です。


学内に金型研究センターを立ち上げたい

具体的に遠州デジタルモールドバレー構想はどのように進めていくのでしょう。

「本学にはすでに分析技術の『先端機器分析センター』や加工技術の『やらまいか創造工学センター』といった外部に開放された拠点があります。これらに続いて、同じく外部に開かれた金型技術の研究センターを立ち上げたいと思っています。これはあくまで私個人の構想です。ですが、この金型研究センターや、必要であれば分析センターが地域企業と連携すれば、金型(モールド)技術をさらに高められるのではないかと考えています」(後藤教授)。

静岡理工科大学が金型産業に向けて提供できる技術はいくつかあります。後藤教授の研究に関していえば、前回説明した電解加工技術のほかに、例えば金属表面に機能材料を強固に入れ込む放電表面処理があります。放電加工と同じ要領で金属に電極を近づけて放電を起こします。このとき電極に機能材料を混ぜておき、放電の際に材料が一部溶けて金属側に移るようにしておくのです。材料と金属は溶けた状態で出会いますから、出来上がる皮膜は極めて付着力の強いものになります。

金型では表面に炭化チタン(TiC)などチタン系の皮膜を付けることで耐摩耗性が高まり寿命が延びることが知られています。皮膜を作る方法はいくつかありますが、多くの方法で問題となるのが、付着力が弱くはがれてしまうことです。放電表面処理はこの問題を解決する有力な方法の一つと考えられています。また、金型の穴の奥まった箇所など、他の方法では難しい部分に皮膜が作れるメリットもあります。


金型評価に科学の目を

金型技術は経験に依存している部分が大きいといわれていますが、ここに最新の科学の目を持ち込むことも遠州デジタルモールドバレー構想の大きな特徴です。

先端機器分析センターには走査型電子顕微鏡や電子線マイクロアナライザ(※7)などがあり、すでに外部の人が使えるようになっています。例えば金属が破断したときには、走査型電子顕微鏡を使って破断面を確認し組成分析を行うことで、その原因が金属疲労なのか不純物によるものなのか推測できます。

※7 電子線マイクロアナライザ:電子ビームを照射すると元素に固有のX線(特性X線)が発生する。そのX線を検出することで、サンプル表面の組成を分析する装置

また、電子線マイクロアナライザを使うと多元素マッピングを得ることができます。これは複数の元素が場所によってどのような濃度分布になっているか示す図です。多元素マッピングは後藤教授も電解加工の研究で利用しています。超硬合金を電解液に浸すとコバルト(Co)が溶け出して品質が劣化するのですが、これを防ぐ対策を施したときに、どの程度コバルトの溶出が抑えらたのか電子線マイクロアナライザで確認しているのです。

公開利用とはなっていませんが、先端機器分析センターには鉄(Fe)原子の状態を分析できる「顕微メスバウア分光装置」があります。そしてこの装置を開発した吉田豊教授(理工学部物質生命科学科/先端機器分析センター センター長)がいることも静岡理工科大学の強みでしょう。企業が抱える問題によっては同装置を使った研究支援が受けられるかもしれません。

製造技術だけではなく分析技術も提供していく遠州デジタルモールドバレー構想。この構想からコスト競争力のある金型、付加価値の高い金型が生まれるようになれば、その影響は遠州にとどまらず、日本のものづくりの競争力をさらに高めていくことでしょう。

・超硬合金の金型を高速で作る次世代技術(1) ── 機械工学科 後藤昭弘 教授


後藤昭弘教授プロフィル
1988年東京大学工学部精密機械工学科卒業。
1990年同大学院工学系研究科精密機械工学専攻修了後、三菱電機入社。
1999年博士号(工学)取得。
専門分野は、電気加工、精密加工、表面処理。
2013年より現職。