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ホーム > 研究力 > 人の生活に合わせて節電する“気が利くシステム”

人の生活に合わせて節電する“気が利くシステム”


理工学部電気電子工学科
加藤丈和 准教授

「なんかIT機器に使われているなぁ」と思ったことはないでしょうか。PCでエラーと出たのでその原因を調べていたら1日つぶれた。遠くにあるプリンターまで印刷物を取りに行ったら紙切れだった。世界的なトップ棋士を破ったコンピューター囲碁、アルファ碁の対局動画を見ていたら、実際に碁石を置いているのは人間(オペレーター)だった・・・。

IT機器はますます私たちの生活に入り込んできています。生活を便利にしてくれてもいるのですが、あと一歩のところを人間がフォローしなくてはいけないケースがまま見受けられます。家庭の消費エネルギーを「見える化」するHEMS(※1)もその例かもしれません。

※1 HEMS:Home Energy Management Systemの略。家電や電気設備で消費する電力をモニターに表示するシステム。個々の家電の制御(電源のオン/オフやエアコンの温度調整など)をモニターから行うこともできる


HEMSはエコロジーと快適な生活を両立するための便利なシステムですが、「電力の使いすぎです」とアラートが出たときにどの家電をオフにしてどれをオンのまま残すのか考えるのは人間です。そして実際にスイッチを操作するのも人間です。節電しようというモチベーションがあるうちはそれもいいのですが、時間が経つにつれてだんだん面倒だという気持ちが頭をもたげてくるかもしれません。「もう少し気が利けばいいのに」。

加藤丈和 准教授(理工学部 電気電子工学科)は「もう少し気が利く」電力管理システムを研究してます。
生活パターンも理解する“おもてなしホーム”

快適に、そしてエコに使いたい家電たち

「気が利く」とは、例えば2階に人がいないことを認識して「2階の部屋の照明を消しますよ」と提案することです。また住人が10分後に寝室へ行くタイミングであれば寝室のエアコンは切らないでおくといった判断もしてくれるシステムです。

こうした気の利いた“おもてなし”ができるようになるためには、住人がどこにいてどんなことをしているのか知る必要があります。生活パターンを学習することも必要でしょう。

そこで加藤准教授は、まず個々の家電の使用状況を測定し使用パターンを理解することから始めます。家電製品にスマートタップ(※2)を付けてデータを取るのです。

※2 スマートタップ:コンセントと電気機器の間に接続し、機器が消費する電力量を計測する装置

電力消費はその時々の値に注目するのではなく、時系列の中での変化を捉えます。この点は加藤准教授の研究の特徴です。加藤准教授は画像理解やパターン認識が専門で、今回は時系列の消費電力変化が認識対象となるパターンなのです。いつ何がどのように使われているか使用パターンを学習した後は、そこから人々の生活行動を推測していきます。解析にはデータマイニングと呼ばれる技術も活用しています。

「全家電で変化履歴のパターンを取り複数ポイントでの相関を見ることで人の行動パターンを解析します」。簡単な例では、夜、リビングの照明が消され寝室の照明が点いて、十数分後に消灯したら就寝したということでしょう。こうした解析を進めていくと、今そこにいる人がくつろいでいるのか、または外出の準備をしているのかといったことまで判断できるようになるといいます。

人がどこにいるのか検知する方法として無線LANを使う研究も始めました。専用のタグを人に持たせることはしません。人間はかなり強い電波吸収体ですから、人が通るだけで無線LANの強度は著しく変わります。この変化を検知して人の動きを捉えることができないかと期待を寄せているのです。
雲の動きを見て発電量を予測する

太陽電池パネルと雲の動きを監視するカメラ

一般家庭では電気の消費にばかり注意が向きがちですが、最近は発電装置を設置する家も増えてきました。太陽光発電パネルや都市ガスで発電する設置(エコウィルやエネファーム)などです。家庭の電力消費を管理するのであれば、こうした装置にも目を配らなければなりません。

家庭の発電装置のなかで太陽光発電は天候に左右されるという特徴があります。晴れれば家庭の消費量以上に発電し、曇りや雨の日は発電量が期待できません。管理すべきリスク要因ともいえます。加藤准教授は効率的な太陽光発電マネジメントの研究にも取り組んでいます。例えば空を監視するカメラを設置して、雲の動きから発電量を予測するシステムです。学内に設置された太陽光パネルで実証試験を行っています。晴れが続きそうなら供給電力に余裕ができますから、冷房の温度を下げたいという住人の希望に応えることもできるようになります。

加藤准教授は、産業技術総合研究所や和歌山大学、京都大学などを経て、2016年9月から現職となりました。静岡理工科大学では、これまで取り組んできた研究や実績を統合できる自由な研究環境に魅力を感じているといいます。

「静岡理工科大学は小規模な大学ではありますが、自由に研究ができる恵まれた環境にあります。ここで幅広い研究を展開していければと思っています。例えば電力をインターネットのように分散して送る研究などです。エネルギーマネジメントも家庭向けだけではなく、ビル向けや工場向けもやりたいですね。特に小規模工場のエネルギーマネジメントは重要だと思っています。実験フィールドとして協力してくれる地元企業を募集しています」。


加藤丈和 准教授プロフィル
2001年 産業技術総合研究所 特別研究員。
2003年 和歌山大学システム工学部 助手。
2006年 和歌山大学システム工学部 講師。
2008年 情報通信研究機構 専攻研究員。
2009年 京都大学大学院情報学研究科 特定研究員。
2011年 京都大学大学院学術情報メディアセンター 特定准教授。
2012年 京都大学大学院情報学研究科 特定研究員。
2013年 京都大学大学院情報学研究科 特定准教授。
2016年より現職。