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【連携する研究者たち】 ドローンの上をいく無人航空機の物流システム


機械工学科 増田和三 教授

静岡理工科大学では教員同士の共同研究を推進しています。一つの専門分野では解けない課題も、複数の教員が協力することで解決につながる可能性があるからです。今回は、AIを使った無人航空機という課題に挑戦する、機械工学科の増田和三教授、田村博特任講師、コンピュータシステム学科の高野敏明講師の3人の研究を紹介します(以下、発言者のお名前は敬称略、聞き手は物質生命科学科 山﨑誠志 教授)。

――今進めている共同研究について教えてください。

増田 現在、静岡県では、垂直に離着陸できて滑走路が不要な無人航空機を開発中です。この無人航空機を使った物流システムができないかと考え、無人航空機の専門家である田村先生、AIの専門家である高野先生に声をかけて、1年前にスタートしたのがこの共同研究です。私、増田はプロジェクト全体を統括して推進する役割を担っていく予定です。

――開発している無人航空機はどのようなものでしょうか。

増田 ドローンのように複数のプロペラを備えていて、垂直に離着陸できます。また翼も備えているので水平飛行時は飛行機のように飛びます。翼があるので、長距離の移動はドローンに比べて有利になります。

機械工学科 田村博 特任講師

――既存のドローンや航空機を利用した物流との違いを聞かせて下さい。

増田 物流システムとしてみると、ドローンは無人飛行ですが、その飛行距離は10km、荷物の積載量は10kgといったところです。一方、大型の航空機は有人飛行となり、航続距離は1000~1万km、積載量は数百トンです。無人化しようという動きもあるようですが、大きな飛行場が必要になります。我々が開発している無人航空機は、その間を埋める物流システムを想定しています。すなわち、飛行距離は100kmオーダー、積載量は100kgといったところです。

静岡県は東西155km、南北118kmです。ほぼ中央にある静岡市あたりを起点にすると、飛行距離100kmというのは、ちょうど静岡県をカバーするぐらいの規模の物流システムが出来上がるといったイメージです。

現在、この距離を担っているのはトラックです。ですがトラックは道路という制約がありますから、意外と輸送に時間がかかる場合がある。例えばここ袋井市から伊豆の下田市までなら天城越えのルートになりますが、無人航空機なら駿河湾の上を飛ぶことで陸路よりはるかに短時間で輸送できる。多分、3時間を20分に短縮できるでしょう。

田村 無人航空機の飛行は場所や高度が規制されていますが、「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」にて2017年5月19日より国からロードマップが示されています。物流に関しては2018年度から離島や山間部を中心に実証実験の規制緩和が進んできています。

――技術面ではどのように進めていくのですか。

田村 静岡県が無人航空機の開発を進めていることは先ほど増田教授が述べたとおりですが、一方で本学でもモデル機を製作しようと考えています。実証実験などを行うためです。

航空機には幅広い技術が必要です。航続距離や求められる機能に合致するように、モーターや電池などの仕様、プロペラや機体のサイズなどを最適設計していく必要があります。そのため、我々だけでなく、本学のさまざまな先生方や学生たちとコラボレーションしていく計画です。

コンピュータシステム学科 高野敏明 講師

高野 私は無人航空機そのものの制御と運航支援の両面でソフトを開発していく予定です。空には複数の機体が飛んでいたり鳥も飛んでいますから、それらを避ける。また不幸にも、急な雷雨やバードストライク(鳥が衝突する事故)などのトラブルがあった場合に、機体の自己診断をする必要があります。今、どこを飛んでいて、損傷度合いはどれくらいかなどを診断するわけです。当面は遠隔操作をしている操縦者などの運行管理者に機体情報などを送り判断を仰ぐことになりますが、いずれAIを使って高いレベルの判断をし、例えばその損傷でも目的地まで安全に飛行できるのかどうか、といった判断ができるようにしたいと考えています。

運航支援の面では、例えば風の影響で速度が出ない、運行が遅れているといった場合に、運航管理者にアラート(警報)を出すとともに「風の影響の少ない高度にする、あるいはコースを替えてみてはどうか」といったヘルプ情報を提供するソフトです。

いずれも、まずは多くのデータを集めなければ開発できません。機体にどのようなセンサーを搭載しようかといったところから田村先生などと連携して進めていく予定です。


――優れた性能の無人航空機が出来たとして、その用途にはどのようなものがあるとお考えですか

増田 大きな物は運べません。さきほどトラックの話をしましたが、現在、トラックが受け持っているコンビニやスーパーへの小分け配送あたりに可能性があるのかなと思っています。トラック輸送すべてに取って代わるわけではなく、無人航空機にメリットがあるところから導入されるでしょう。棲み分けということだと思いますが、ただ時代の流れとして、無人の物流、空の物流は浸透していくと思いますよ。

静岡県が他県に先駆けて無人航空機の物流システムを成功させれば、周囲の都道府県も刺激を受けるでしょう。その結果として、全国規模で広がればいいかなと期待しています。

増田和三 教授 プロフィル
1986年 名古屋大学工学部航空工学専攻修士修了
1986年 三菱重工業株式会社入社 日本版スペースシャトル、宇宙ステーション補給機の開発・運用に従事
1995年 Massachusetts Institute of Technology, Aeronautics & Astronautics, Master of Science
2015年 現職

田村博 特任講師 プロフィル
1981年 日本大学理工学部機械工学科航空宇宙専修コース卒業
1981年 ヒロボー株式会社入社 産業用無人航空機開発などに従事
2007年 同社 事業部長 常務執行役員
2010年 日本ラジコン模型工業会会長 日本産業用無人航空機協会理事
2014年 現職

高野敏明 講師 プロフィル
2008年 三重大学 工学部 電気電子工学科 卒業 (学士(工学))
2010年 三重大学 工学研究科 電気電子工学専攻 (修士(工学))
2013年 三重大学 工学研究科 電気電子工学専攻 (博士(工学))
2013年 立命館大学 情報理工学部 知能情報学科 特任助教
2016年 現職