代表的な概念関係

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或る一つの概念と別の一つの概念の関係を或る一つの関係で定義するのは、知識表現の最も基本的な形の一つで、意味ネットワークの単位となる。
矢印の元となる概念を主語(その範囲は定義域)、関係に当たる矢印を述語、矢印の先にある概念を目的語(その範囲を値域)という事もある(フレーム構造では其々名称、属性、属性値に対応する)。
実際の脳では、関係に当たるものは、もう一つの細胞(群?)が扱っていて、或る概念と関係が発火したときに、別の概念が発火するようになっているのかも知れない。
なお、概念や関係の設定は絶対的なものが決まっている訳ではなく、設計者の考えによって、様々な種類が存在する。

体系(上位概念・下位概念:is-a)

上位概念(super-concept)と下位概念(sub-concept)の体系は、概念関係のバックボーンとしてよく用いられる。しかし、何を以って上位・下位の定義を行なうのだろうか。
例えば動物の体系は、門→網→類等の体系(脊椎動物門→哺乳網→ツキノワグマ類、等)があり、これは専門の学問領域で作られた体系だ。
また「市」「町」「村」の上位概念として、「地方自治体」はふさわしい。これが納得出来るのは、元々地方自治体という言葉が、これらを束ねるカテゴリー名称として定義されているからだ。
しかし、上位概念として定義された言葉以外について、正確な上位・下位を定義するのは意外と難しい場合がある。
例えば頭上にある「空」の上位概念は何か。「場所」なのか「空気」なのか「宇宙」なのか「景色」なのか、視点によって変わったりする。一つの言葉が多くの意味を持つ場合は尚更だ。
或る下位概念が複数の上位概念を持つ場合も考えられるだろう。上位選定基準として、「下位概念は上位概念の概念関係を承継する」という規則がよく使われる。
承継とは図のように、或る概念の持つ概念関係を、別の概念がそっくり受け継ぐ事で、記述しない関係を導ける(点線)ので、概念データベース作成の強力な武器となる。

これを逆に考えると、共通の概念関係を持つ(似た者)グループを束ねる上位概念を置く事も考えられる。
このような「作られた上位概念」は多く、例えばEDR電子化辞書に於いて、「先生」の上位概念は「対人関係で捉えた人間」となっている。
上位概念と下位概念は逆の関係にある。従って、Aの上位概念はBである、と記述すれば、Bの下位概念にAがある事を記述する必要は無い。
また上位概念も下位概念も其々、推移的である。AがBの上位(下位)概念で、BがCの上位(下位)概念ならば、AがCの上位(下位)概念である事が導かれる。

個物(Individual)

或る概念と、現実世界に存在する個別な具体例(個物)を分ける考え方で、一般的に用いられている。
例えば、「日本人」という概念と「西郷隆盛」といった固有名詞で表される人物(1828年に鹿児島で生まれた明治維新の立役者。1877年に鹿児島で亡くなった)等の関係になる。
これは上位・下位の体系とは区別するべきという考え方が一般的だ。具体的な人は、例えば日本人の個物であって、日本人の下位概念ではない。
区別するために、図のようにノードの形を変えて表現する場合も多い(ここでは概念が楕円、四角が個物)。
或る個物が属する概念の概念関係は、個物にも承継される(人間に年齢があるなら、具体的なAさんにも年齢がある)。
個物は、インスタンスと呼ばれる事も多い。

同義・類義

全ての概念は、データベースにする以上は、何らかの記号(主に文字列)で定義する必要がある(但し、概念の正確な定義は概念関係自体で行なわれ、記号は人間向けのラベルに過ぎないという考え方もある)。
或る文字列と別の文字列が表す意味が同じ場合を、両者は同義関係にあると捉えるのが普通の考え方だが、これも微妙な問題を含む。
例えば「真っ赤」と「真紅」は同じ意味とも考えられるが、受けるニュアンス(語感)は違うかもしれない。
意味の範囲を決める必要が出て来る。語感までを意味に含めた場合、表記が違えば全て異なり、同義語は存在しないという考え方もある。
意味が似た類義語になると、さらに類似の範囲を決めるのは難しく、関係としては定義しない方がいいかもしれない(同じ上位概念を持つ下位概念の群を類義語とする等、別の方法で定義する方が正確という考え方もある)。

全体・部分(has-part・part-of)

或る物が、別の物の一部であるという関係を表す述語である。具体物の場合は比較的、分かりやすい。
例えば「鼻」は「顔」の一部で、「顔」は「体」の一部で、といった関係になる。
抽象物の場合でも定義出来るかもしれない。「国」の一部が「県」で、「県」の一部が「市町村」という具合だ。
全体と部分は逆の関係で、其々推移的な関係である事も明らかだ。
また具体物の場合、「全体が移動したら、部分も一緒に移動する」といった規則も作れるだろう(但し、固定されている場合)。これは例えば「連動」という述語で全体と部分を結ぶ。

属性(attribute)・材質

この関係概念(述語)は幅が広く、慎重に定義する必要がある。字義からは、或る概念に属する性質となる。
具体物であれば、色や形や重さ、動物ならば年齢、性別等が考えられる。数学的、物理的に定義される量である場合が多い。
では、抽象物の属性は何だろうか。物理量が無くても、「印象」等の感覚的な属性を定義出来るかもしれない。
「属性」関係は、目的語に関係概念(この例では「色彩」)を取る。上位概念で具体物の色彩として或る色を定義すると、下位概念は全てその色彩になる(承継による)ので、具体物は「色彩」を属性とする事だけ定義しておき、其々の下位概念で、具体的な色彩の値(色彩の下位概念)を取るようにする。
また、このように定義された「色彩」等を述語に用いた場合、明示しなくても、その主語が述語「属性」により「色彩」等を目的語に取る事が前提となる。
属性は、所属する対象が存在する限り変化しない本質属性と、時間等の条件により変化する非本質属性に分ける考え方もある。また、名前や識別番号を属性とする考え方もある。
或る概念が存在する位置や時刻も、属性になるだろうか。

具体物の材質は、属性とも考えられるが、属性とも全体・部分関係とも異なるものとする考え方もある。「ノート」→(材質)→「紙」等のような関係になる。
属性は、日本語では形容詞や形容動詞に該当する言葉になる場合も多い。動詞を修飾する副詞も属性として扱えるかもしれない。

所有

関係を持つ、という言葉があるように、日本語で考えると、何らかの概念関係(述語)は「所有」と捉える事が出来てしまう。
全体は部分を持つ、と言っても、さほど違和感はない。「持つ」という単語の多義性によるものだ。
また、「持つ」は所有していない他人の物を「手で保持する」場合も含まれる。
しかし、これらの関係と「所有」が混同するのは良くないので、所有は例えば「経済的な占有権」等と、狭く定義する方が正しいかもしれない。
但し、動物がエサを所有するという考え方も成り立つ。主語は「生物」で、目的語は「具体物」と広く考える事も出来る。

個数(cardinality)・大小

例えば、サッカーのメンバーが11人である等、個数が決まっている関係を定義するときには、目的語に数字を取る、「個数」という述語を用いる。
個数の目的語は数字の他、「~以上」「~以下」等の範囲もあり得る。
数の大小は、例えば「大きい」「小さい」「等しい」等の述語も考えられ、「大きい」と「小さい」は逆の関係で其々推移的、「等しい」は対称の関係で推移的となる。
対称の関係(述語)とは、A→Bのとき、B→Aが成り立つものを言う。
また、個数の制約等を概念関係自体に含める記述方法もある。例えば、「色彩は一色に限定される」事を示す為に、「色彩:1」という数字を付けたりする。
この場合、例えば「1..」で1以上、「1..5」で1~5の範囲、Nで不特定の数を表現したりする。

順序(先行・共起・継起)

或る概念の前に、別の概念が起きているはずの関係を「先行」、同時に起きる場合を「共起」という。
或る概念の次に、別の概念が続いて起きる関係を示す述語を「継起」という。
例えば、「食べる」→「腹が一杯になる」といった関係だ。
これらは、必ず起きる場合、稀に起きる場合、その度合いを確率で表現する等、様々な条件と表現法が考えられる。

反対・排反・選択

「東」は「西」の反対であるとか、「好き」は「嫌い」の反対である等、反対概念は人間の感覚では容易に理解出来るが、単に「反対」という述語で結べばよいのだろうか。
点対称と線対称の違いのように、「反対」には視点があり、それと組にして定義する必要があるかもしれない。
「排反」は、或る概念が成り立てば、別の概念は成り立たない事で、例えば「生きる」と「死ぬ」がある。しかし、この場合にも「主語・時刻が同一」等の条件を入れる必要があるだろう。
選択とは、そのうちどれかを選ぶ関係になる。

主格(agent)

動詞(日本語では用言)に対する関係の筆頭としてよく出て来る。所謂「主語」だ。日本語では助詞の「は」「が」等で表現される。
動作主と属性主を分ける考え方もあるが、「属性」述語によって記述すれば、主語である事は明確なので、動詞に限定してもよいのかもしれない。
概念関係の「主語」「述語」「目的語」の主語とは、勿論異なる。

対象(object)

客体等とも呼ばれ、通常は動詞の目的語を指す。日本語では助詞の「を」「に」等で表現される。
英語の第4文型に見られるように、間接目的語と直接目的語を区別する場合も多い。
これも、概念関係の「主語」「述語」「目的語」の目的語とは異なる。

道具(instrument)

動詞の主要な格関係の一つ。日本語では助詞の「で」等で表現される。
動詞が「出来る」になると材料を表す場合もあり、これは「材質」述語で表現するべきかもしれない。
道具は具体物に限り、抽象的な「方法」という述語を定義する場合もある。

場所・時刻

動詞の主要な格関係の一つ。日本語では「で」「に」等で表現される。
場所は物理的位置だけではなく、広い意味での「場面」「状態」「条件」といった概念も含める場合がある。
「行く」「来る」「成る」等の移動や変化を表す動詞の場合は、「始点」「終点」の述語も考えられる。日本語では「から」「まで」「に」等で表現される。

原因・理由・目的

これも動詞の主要な格関係として、よく挙げられる。