Lectures
物質中の原子の動的挙動が問題となる現象は格子振動, 拡散, 相分離, 構造変態, 弾性・塑性変形など, 多種多様で、その時間スケールはピコ秒から数1000秒にわたっている. したがって「原子の動きを見る」ためには,その運動固有の時間・空間スケールで直接追跡できる実験手段を選ばなければならない(図1.1). 電子顕微鏡は原子集団の配列を直接像として観察できる点で極めて優れているが, 個々の原子の動きを直接観察できるわけではない. メスバウア分光は利用できるプローブ原子の種類は限られるが,100ナノ秒の時間スケールで原子の“自己相関関数”に関する情報が直接得られる. ここではメスバウア分光の基礎を簡単に解説した後,物質中の「原子の動き」に関する様々な研究を紹介する.