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1. はじめに


物質中の原子の動的挙動が問題となる現象は格子振動, 拡散, 相分離, 構造変態, 弾性・塑性変形など, 多種多様で、その時間スケールはピコ秒から数1000秒にわたっている. したがって「原子の動きを見る」ためには,その運動固有の時間・空間スケールで直接追跡できる実験手段を選ばなければならない(図1.1). 電子顕微鏡は原子集団の配列を直接像として観察できる点で極めて優れているが, 個々の原子の動きを直接観察できるわけではない. メスバウア分光は利用できるプローブ原子の種類は限られるが,100ナノ秒の時間スケールで原子の“自己相関関数”に関する情報が直接得られる. ここではメスバウア分光の基礎を簡単に解説した後,物質中の「原子の動き」に関する様々な研究を紹介する.

図1.1 メスバウア分光で見る原子の動き

最初のテーマは原子の動きと密接に関連する格子欠陥に関する話である. 極微量の格子欠陥を捉え,その動きを追跡した研究を紹介する。次の拡散機構の問題は1960年代までに多くの金属・合金に関しては一応の理解が得られたと考えられ, これまでに多くの解説や教科書がすでにある[1-4]. 現在では, 拡散の研究は金属間化合物やアモルファス、半導体などの新素材中の拡散測定が主に行われ、材料開発に重要な情報を提供している.ところで、最近メスバウア分光を初めとして、中性子準弾性散乱、核磁気共鳴、走査トンネル顕微鏡、ミューオンスピン共鳴等、個々の原子の動きを直接追跡できる実験手段が登場し、分子動力学によるコンピュータシミュレーションや第一原理計算の発展もあいまって、拡散研究は新しい時代に入りつつある。つまり、従来のように、物質中の原子移動を巨視的情報と現象論的なモデルを組み合わせて研究するのではなく, 原子のジャンプを直接“見て”, 理論の予測と比較しながら研究を進めることができるようになりつつある. ここでは, メスバウア分光による拡散の研究法を解説し, 高速拡散の研究に関連したいくつかの実験結果を紹介する.これまで謎とされてきた「高速拡散」の研究も, 現在, 高速拡散する原子を直接捉えることに一部成功し, ようやく,その拡散機構を原子スケールで明らかにするための出発点に立ったと考えられる[5-10].