暮らしの助けとなるロボットを創り出す
機械工学科
飛田和輝 教授
飛田和輝 教授
寝ている人を起こす、車いすを押すといった介護の動作は、負荷の大きな作業です。しかも、人の動きや路面の凹凸など複雑で刻々と変わる状況に対応しなければならず、決まり切った機械的動作では対処できません。機械工学科の飛田和輝教授が専門としているメカトロニクス(Mechatronics)は、こうした問題に取り組む学問領域の一つです。
メカトロニクスは機械学(Mechanics)と電子工学(Electronics)の合成語で、機械と電子回路を組み合わせて新たな知見を得る、そんな分野です。飛田教授は、メカトロニクスの知見を使い、生活の助けとなるロボットなどを開発しようとしています。
メカトロニクスは機械学(Mechanics)と電子工学(Electronics)の合成語で、機械と電子回路を組み合わせて新たな知見を得る、そんな分野です。飛田教授は、メカトロニクスの知見を使い、生活の助けとなるロボットなどを開発しようとしています。
電動ロボットが車いすを押して移動する
車いす移動ロボットの試作機
今、飛田研究室では車いすを動かすロボットを開発しています。通常、老人ホームなどでは、入居者が自分の部屋から食堂に集まって食事をしますが、自力で歩けない人は、職員が一人ひとり車いすを押して食堂に連れて行きます。毎日のことですから、入居者が多い大規模施設では大変な仕事です。そこで、車いすを押して居室と食堂の間を送り迎えしてくれるロボットを作ろうとしているわけです。
試作したのは、手押し式の車いすに装着して目的地まで自走する移動ロボットです。1人運び終えたら、また別の車いすに取り付けて入居者を運ぶ、という使い方を想定しています。
なぜすべてを電動車いすにしないのでしょう。ロボット機能を持った電動車いすを人数分、新規に導入するのは、施設にとって大きな負担となります。また、多数の電動車いすを運用すると、充電やメンテナンスの手間もばかになりません。これに対して、既に施設にある手押しの車いすに装着する移動ロボットなら、手間もコストも最小限で済みます。
試作したのは、手押し式の車いすに装着して目的地まで自走する移動ロボットです。1人運び終えたら、また別の車いすに取り付けて入居者を運ぶ、という使い方を想定しています。
なぜすべてを電動車いすにしないのでしょう。ロボット機能を持った電動車いすを人数分、新規に導入するのは、施設にとって大きな負担となります。また、多数の電動車いすを運用すると、充電やメンテナンスの手間もばかになりません。これに対して、既に施設にある手押しの車いすに装着する移動ロボットなら、手間もコストも最小限で済みます。
現在、リモコンで操縦する試作機を作って、使いやすさや移動能力などの検証を進めている段階です。今後は自律機能を開発していく予定です。
ロボットが自律移動をするためには、搭載するコンピュータに施設内の地図を記録し、センサーで現在位置を把握した上で、目的地までの経路を算出する必要があります。また、通行者やカートなど、経路上に予期できない障害物があったときには、危険な状況になる前に停止して安全を確保することも必要です。
ロボットが自律移動をするためには、搭載するコンピュータに施設内の地図を記録し、センサーで現在位置を把握した上で、目的地までの経路を算出する必要があります。また、通行者やカートなど、経路上に予期できない障害物があったときには、危険な状況になる前に停止して安全を確保することも必要です。
視覚障害者を屋外で誘導する、新たな白杖を求めて
飛田研究室では、歩く人を誘導するロボットも研究しています。こちらは、飛田教授が静岡理工科大学に着任する前、産業機械や自動車事業を手掛ける日本精工に勤務していた時に開発・実用化した病院向けの来院者誘導ロボットを発展させようという研究です。
大きな総合病院では、受診の際、診察や検査のために長い廊下を移動しなくてはなりません。認知能力の落ちた高齢者や視覚障害者など、病院にはさまざまな人が来院しますから、目的の場所に誘導するロボットがあると便利です。
日本精工で実用化したロボットは、ハンドルに手を載せると、利用者の手を引いて目的地まで誘導するタイプでした。そのロボットの有用性を知った視覚障害者から、「屋外で誘導するタイプも欲しい」という要望があったため、研究室では現在、屋外で視覚障害者を安全に誘導するロボットの研究を進めています。
「視覚障害者の方々は白杖を使って歩行します。研究の方向は二つあって、一つはモーターを備えたロボットで引っ張って誘導するもの、もう一つは白杖に色々なセンサーを付け、情報を利用者に伝えるものです」。
「自走ロボットで手を引くやり方は、バッテリー、モーター、センサーなどが必要なので、大きく重くなります。白杖にセンサーを装備する方法も、電源とセンサーの重量を考えると、白杖として持ち歩くのには重くなりすぎるでしょう。そこで今目指しているのは、自走能力がなく、ステアリング機能だけを持たせたロボットの開発です」(飛田教授)。
つまり、利用者がロボットを押して歩くと、ロボットは必要に応じて舵を切り、利用者を誘導していく仕組みです。視覚障害者は歩く力が弱いわけではありませんから、その力を利用しようというアイデアです。
飛田研究室ではこのほか、田んぼのあぜ道の草刈りを行うロボットや、人と合奏する自動楽器の研究を行っています。自動楽器はややかけ離れたテーマのように思えますが、「合奏は相手の演奏するテンポや微妙な音程の変化にリアルタイムで応答する必要があり、いわば究極の共同作業です。ここで得られた知見を産業用としてフィードバックしていきたいと考えています」と飛田教授は話しています。
大きな総合病院では、受診の際、診察や検査のために長い廊下を移動しなくてはなりません。認知能力の落ちた高齢者や視覚障害者など、病院にはさまざまな人が来院しますから、目的の場所に誘導するロボットがあると便利です。
日本精工で実用化したロボットは、ハンドルに手を載せると、利用者の手を引いて目的地まで誘導するタイプでした。そのロボットの有用性を知った視覚障害者から、「屋外で誘導するタイプも欲しい」という要望があったため、研究室では現在、屋外で視覚障害者を安全に誘導するロボットの研究を進めています。
「視覚障害者の方々は白杖を使って歩行します。研究の方向は二つあって、一つはモーターを備えたロボットで引っ張って誘導するもの、もう一つは白杖に色々なセンサーを付け、情報を利用者に伝えるものです」。
「自走ロボットで手を引くやり方は、バッテリー、モーター、センサーなどが必要なので、大きく重くなります。白杖にセンサーを装備する方法も、電源とセンサーの重量を考えると、白杖として持ち歩くのには重くなりすぎるでしょう。そこで今目指しているのは、自走能力がなく、ステアリング機能だけを持たせたロボットの開発です」(飛田教授)。
つまり、利用者がロボットを押して歩くと、ロボットは必要に応じて舵を切り、利用者を誘導していく仕組みです。視覚障害者は歩く力が弱いわけではありませんから、その力を利用しようというアイデアです。
飛田研究室ではこのほか、田んぼのあぜ道の草刈りを行うロボットや、人と合奏する自動楽器の研究を行っています。自動楽器はややかけ離れたテーマのように思えますが、「合奏は相手の演奏するテンポや微妙な音程の変化にリアルタイムで応答する必要があり、いわば究極の共同作業です。ここで得られた知見を産業用としてフィードバックしていきたいと考えています」と飛田教授は話しています。
ニーズを汲み、本気で真面目に楽しく
飛田研究室では、企業などからの研究依頼や、介護福祉施設におけるニーズの把握など、多くの共同研究を手がけています。「バッテリーやモーター、半導体の進歩によって、メカトロニクスで実現できることが広がり、研究環境は良くなっています。また、一般社会も、ロボットを使った福祉機器などを受け入れる状況になってきました」。飛田教授はこのように述べ、メカトロニクスやロボットによる社会貢献に意欲を見せていました。
研究者プロフィール
飛田和輝 教授
機械工学科
2002年 電気通信大学大学院 電気通信学研究科 博士後期課程修了
2002年 電気通信大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリ研究員
2004年 日本精工株式会社入社 メカトロ技術研究所配属
2015年 自治医科大学 客員研究員
2015年 日本精工株式会社 新領域商品開発センター グループマネージャー
2018年 現職
機械工学科
2002年 電気通信大学大学院 電気通信学研究科 博士後期課程修了
2002年 電気通信大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリ研究員
2004年 日本精工株式会社入社 メカトロ技術研究所配属
2015年 自治医科大学 客員研究員
2015年 日本精工株式会社 新領域商品開発センター グループマネージャー
2018年 現職