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活動状況

物質生命科学科|ポリビニルアルコールをベースとした水に不溶なマイクロファイバーの表面に抗菌性を付与することに成功(理工学部物質生命科学科 機能性高分子研究室)


 本学理工学部物質生命科学科の小土橋 陽平 准教授、齊藤 俊介(修士2年)、松野 慎一朗(2021年度卒 学士)、齋藤 明広 教授が、ポリビニルアルコール(PVA)をベースとした水に不溶なマイクロファイバーの表面に抗菌性を付与することに成功しました。本研究成果は、ACS Omega誌に掲載されました。

 材料表面の細菌汚染によって引き起こされる感染症は、世界で大きな公衆衛生上の懸念事項であり、食品包装や保管、浄化システム、農業、医療分野に重大なリスクをもたらします。ポリビニルアルコール(PVA)をベースとした材料は医療機器として大きな可能性を秘めていますが、表面に抗菌機能がなく、埋入手術などに使用された場合、細菌感染のリスクを伴います。この問題の解決策として、材料表面に抗菌剤を塗布することが注目を集めています。表面塗布する抗菌剤として抗生物質を使用すると、薬剤耐性菌の出現が懸念されます。また銀イオンの場合、金属アレルギーや細胞毒性、環境中への流出などが懸念されます。第四級アンモニウム化合物(QAC)は、低い濃度で幅広い細菌に対して抗菌活性を示します。比較的に細胞毒性が低いことが特徴で、ヒトの皮膚に接触させて使用できるものもあります。QACを塗布した抗菌性材料が開発されてきましたが、多くの場合、QACが材料から漏れ出すことによる抗菌活性の低下と環境への流出が課題となっていました。

 本研究では、水に不溶なPVAマイクロファイバーの表面に、QACを含有するモノマーとメタクリル酸の共重合体を化学的に修飾しました。この共重合体はメタクリル酸由来のカルボキシ基を有し、PVAのヒドロキシ基と簡単な熱処理により脱水反応を起こすことができます。結果として、PVAマイクロファイバー上に修飾されたQACを含有する共重合体は、表面からの流出が少なく,持続的な抗菌活性の発揮と環境への流出の抑制を実現できます。またPVAマイクロファイバーのごく表面のみに修飾されている為、PVAマイクロファイバー本来の熱力学的な特性に影響を与えません。QACを含む共重合体を修飾したPVAマイクロファイバーは未修飾のものと比較して、枯草菌(グラム陽性菌)および大腸菌(グラム陰性菌)に対して抗菌性を発揮することが確認されました。また,ウサギの赤血球に対する溶血率はネガティブコントロールと同等であり、開発したマイクロファイバーが選択的な抗菌特性を発揮することが示唆されました。また本手法は、ファイバーだけではなくフィルムやスポンジなど様々な形状を有するPVA材料に適用することができ、PVAをベースとした医療機器への応用が期待されます。

 本研究は名古屋大学医学部との共同研究により遂行されました。本研究の一部は、科研費(基盤C)により行われております。また、本研究の一部は、本学 先端機器分析センターの機器を用いて行われました。
・ 原著論文はこちら(外部リンク)
・ 機能性高分子研究室のホームページはこちら
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