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最適な学習環境とカーボンニュートラルの実現 ~学校施設における温熱環境の調査~【石川研究室】

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建築環境(温熱)研究室 担当:石川 春乃 准教授

最適な学習環境とカーボンニュートラルの実現
~学校施設における温熱環境の調査~
 

世界は大きくカーボンニュートラルに向けて舵を切った。石油や天然ガスなどの化石燃料による輸入エネルギーに大きく依存する 日本には大きな岐路である。国際社会に向けて日本の目標を掲げた今、地方部では地域特性を活かした取り組みが重要となっている。 カーボンニュートラルを実現する方策は、地域社会にゆだねられている。静岡で建築環境を学ぶ私たちに何ができるのか。 学生が自ら地域社会の課題を見つけ、自分なりの解を求めて主体的に動く。例えば、こんな小さな一歩から始まる。

毎年変わる学習環境、児童の快適感を模索

2018年の酷暑を機に、それまで小学校普通教室空調設置率が低かった静岡県下でも、ようやく小学校の空調(冷房)設備設置が進んだ。19年にはギガスクールが開始、授業でのタブレット利用が始まり、そして新型コロナウイルスの感染拡大が続く21年。
学校や学習環境をめぐる社会状況は、ここ数年の間にも大きく変化してきた。
石川先生の建築環境(温熱)研究室では、静岡県内の自治体と共同で、公立小学校の学習環境をテーマとした実態調査を2018年から継続しておこなっている。現場での実測、実際の教室で児童たちへのアンケートを実施。かつては自分も学んできた小学校での学習環境を、今、大学生になって考えてみる。児童の快適な環境とは、そしてエネルギー消費を抑制する方法とは。

研究室配属になって小学校で現場実測デビュー、データ回収やグラフ化を先輩に教わる。

最適な室温と必要な換気、両立できるバランスを探して
夏や冬は冷暖房導入によって、教室環境は大きく改善したが、窓を開けて換気をする機会が大きく減少している。そこで、2021年には、児童ヘ最適な学習環境を提供するために、室内温度を保ちながら、新型コロナウイルスの感染対策となる必要換気量を確保するという両立のバランスを探る。
2021年夏の今回は、教室と廊下境に扉のないセミオープン教室のA小学校と、一般的な普通教室のB小学校の2校で調査した。小中学校の教室環境は、室温や湿度、明るさや空気質等、細かく文部科学省の学校環境衛生基準で定められている。この2校は基準を満
たしているのか。さっそく、児童が使う教室で、室温や湿度、児童や先生から排出される二酸化炭素の濃度を調べるところから始めた。 調査の結果、B小学校ではどの教室もほぼ基準値内の室温であるが一部で換気量を増やしたい時間帯があった。一方、A小学校では、換気量は十分だが室温がほとんど基準値より暑かった。また、児童アンケートによると、室温が基準値より高いが換気は大いに良好なA小学校では、『快適だ』と回答する児童の割合が多い。室温が基準値より高く暑くても、通風があり換気が十分であると『快適』なのか。こうした自問から、研究への自意識が生まれていく。

大切なのは、使う人それぞれの快適。

地域ならではの方法でカーボンニュートラルを実現
ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)とは『快適な環境を実現しつつ、自らのエネルギー収支をゼロにする建物』である。公共建築物からZEB実現が求められている中、市民に分かりやすい事例として学校施設のZEB化が全国的に進んでいる。温暖で日照量の多い静岡県下の公立小学校では、かつては教室に空調設備などが無くエネルギー消費量は少なかったが、エアコンの導入、コロナ対策の換気量確保、今後はエネルギー消費増大が見込まれている。
「実際に教室で過ごす児童の快適が大前提です。その上で、地域ごとの工夫があってよいはず」と、石川先生は全国一律基準の課題を指摘する。「学習環境でも快適と省エネのバランスを目指すには、地域に適した方法が必要です。
自治体担当者との定期的な共有を行いながら、ICT等の新技術も取り入れて、快適な学習環境のあり方を学生とともに発信していきたい」と石川先生はこれからの展望を話した。
 

実測前の計画説明から実測結果の報告会まで、担当学生を中心にプロジェクト全体を進める。

自分の気づきが課題解決への意欲につながる。自分の考えを研究成果発表として社会に届ける。
 
調査を通じて論理的に考える思考力が身についた
須山 颯太さん
理工学部 建築学科(静岡県立磐田農業高等学校出身)
株式会社 シミズ・ビルライフケア就職

建築環境を題材にした調査では、「なぜこの数値になるのか」と常に課題意識を持って取り組むことを大切にしてきました。
その結果、数値の原因を論理的に考える思考力が身につきました。
本研究室では、社会に出て活躍できる人材育成にも力を入れており、
測定に協力いただく学校関係者への事前の趣旨説明や進捗報告を私たち学生が行います。
社会に対して自分の考えを発信する貴重な経験を得られ、一人の人間としての成長も実感できました。
最終的には、研究が児童の学習環境の向上と学校の省エネルギーに役立てられ、社会に還元できればと考えています。
 
 
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