開学30周年記念事業

開学30周年記念式典・
記念講演開催報告

2021年に開学30周年を迎えた静岡理工科大学は、2021年11月16日(火)にホテルクラウンパレス浜松の4階芙蓉の間にて「静岡理工科大学開学30周年記念式典」を開催。新型コロナ感染症の拡大により延期となっていましたが、約130名もの関係者の方々にご参加いただきました。記念式典では、開式の辞、学長式辞、理事長式辞に続き、ご来賓の大場規之袋井市長、鈴木與平鈴与株式会社代表取締役会長にご挨拶を賜りました。記念式典後には、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の仁木栄氏による記念講演が行われ、持続可能な社会の実現に向けた将来展望についてご講演いただきました。

学長式辞

記念式典の冒頭に登壇した野口博学長は、袋井市民の方々の「私たちの町に大学を」という声を受けて1991年4月に静岡理工科大学が誕生したことに触れ、袋井市ならびに多くの袋井市民、地元企業の方々のこれまでのご支援に対して感謝の気持ちを伝えました。また、「豊かな人間性を基に、『やらまいか精神と創造性で地域社会に貢献する』技術者を育成する」という教育理念のもとで学んだ8,666名の卒業生の多くが、静岡県内の地域企業を担う技術者として地域産業に貢献していると報告。これからの静岡理工科大学が目指すものとして、「ものづくり」から「ことづくり」、「ときづくり」へ、発想を大切にする「ものづくり×ことづくり技術者」の育成を挙げ、さらに地域に愛される大学として取り組む中で、防災・減災にも貢献できる県内初となる建築学科、来年4月設置予定の県内初の土木工学科により、地域の活性化や暮らしやすいまちづくりなどに貢献する人材を育成していくと述べました。最後に「開学30周年を本学の“勢い”を一挙に加速する契機としたい」と決意を語りました。

理事長挨拶

当日は、体調不良により欠席となった橋本新平理事長に代わり、藤浪和夫常務理事が理事長のメッセージを代読。1学部4学科により開設された静岡理工科大学が、大学院や情報学部、県内唯一の建築学科、2022年4月開設予定の土木工学科などを有する県内唯一の私立理工系総合大学として成長できた原動力は、「技術者の育成をもって地域社会に貢献する」という建学の精神と多くの皆様のご支援にあるとして、感謝を述べました。開学30周年を迎えた今年4月には、学内に「ふくろい産業イノベーションセンター」を開設したほか、学園全体のサテライト拠点となる「藤枝イノベーション・コモンズ」を開設。2024年4月には静岡駅北口前の再開発ビル内に複合型キャンパスの開設を予定しているなど、これまで以上に地元企業との連携を深め、地域社会に貢献していくと語りました。そして、「教えることは教わることでもある」という考えのもと、「フェアでオリジナリティの高い教育・研究活動を通じて地域社会に貢献し、学生・生徒と共に成長し続ける総合学園でありたい」との願いから、「総合力と多様な教育で、心躍る未来を」というグループビジョン2030を掲げ、企業や地域社会との関係を深め、開かれた大学として発展していくことを約束して、挨拶を締めくくりました。

来賓祝辞

来賓の大場規之袋井市長は、祝辞の冒頭で「開学以来、大学・市・市民による『大学を活かしたまちづくり』が行われてきました」とした上で、大学設立を機に積み立てられた「袋井市学術交流振興基金」を活用した「公開講座」「市民体験入学」、子どもを対象とした「お理工塾」などの事業を紹介。今後について、「優れた人材の輩出はもとより、先端技術を活かした地域産業への貢献、次代を担う子どもたちへの教育、市民生活の質の向上などへの支援とともに、『新しい技術』で社会を支える大学として、世界に向けて、さらなるご発展を祈念しています」との期待を述べました。

次いで登壇した鈴木與平鈴与株式会社代表取締役会長は、1970年に静岡県自動車学校から静岡産業技術専門学校を分離開設した際の初代理事長として、大学設立を決意し、大学建設、初代学長の選任などに奔走した30年前当時の苦労について振り返りました。そして、中学校、高等学校、専門学校を含む学校法人のランドマークとして、2024年4月に「御幸町キャンパス」を開設予定であることに触れ、同キャンパス内に設置予定の「地域協働センター」や「大学・サテライトラボ」も活用して、地域とともに働き、新しいものを生み出すチャレンジをしてほしいと述べました。最後は、本学学生に向けて「コロナ禍という苦労を乗り越え、教職員の皆さんと共にフェイス・トゥ・フェイスの学問を行い、新しい友情を育み、キャンパス内に若々しい笑顔が溢れるようと願っています」という、エールを送りました。

記念講演「カーボンニュートラル実現に向けたエネルギーイノベーション」

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
技術戦略研究センター(TSC)
サステナブルエネルギーユニット ユニット長
仁木 栄 氏

記念講演に、NEDOのTSCサステナブルエネルギーユニットの仁木栄ユニット長が登壇。英国グラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会合)で議論された通り、国内外でカーボンニュートラルの動きがますます激しくなり、その重要性が増しているとした上で、以下の8つのテーマでご講演いただきました。

1. NEDOの組織と活動

イノベーション・アクセラレーターとしての役割を担うNEDOの中でも、技術戦略研究センター(TSC)は「社会の変化を敏に捉え、将来像を描き、実行性のある提言を行う」ことをミッションとしています。さらにサステナブルエネルギーユニットでは「サステナブルエネルギーシステム(エネルギー社会システム)」、「グリーンエネルギーネットワーク(エネルギーネットワークの脱炭素化・強靱化)」、「グリーンエネルギーテクノロジー(エネルギー技術の転換と脱炭素化)」という3つのステージでの貢献を目指しています。NEDOでは活動の成果を「TFC Foresight」として公開しているほか、「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針(NEDO総合指針)」を策定。2050年を見据えて、温室効果ガスのうち最も排出量の多いCO2から検討を開始し、CO2削減に効果のある様々な技術を総合的・客観的に評価しました。次世代太陽光発電や次世代風力発電、燃料電池などの代表的な革新技術のCO2削減ポテンシャルを検討したところ、いずれの技術も数億トンから数十億トンという高いレベルにあり、技術開発の推進によってCO2排出量の大幅削減に寄与することがわかりました。

2. カーボンニュートラルに向けて

日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略では、地球温暖化への対策を成長の機会と捉え、成長が期待される14分野において高い目標を設定して政策を総動員。「電力部門の脱炭素化」「電力部門以外での『電化』の推進、熱需要は水素化、CO2回収」「蓄電」に注力して取り組んでいきます。特に、電力分野は世界のCO2排出量の40%を占めており、2050年のカーボンニュートラル実現のためには電力分野のゼロエミッションが求められます。再生可能エネルギーはCO2削減に最も有効な技術のひとつで、特に太陽光発電と風力発電はCO2排出量の削減ポテンシャルが大きく、2050年に向けて大幅な導入拡大が期待されています。

3. 太陽光発電

客観的データで見ると、太陽光発電の2020年での世界累積導入量は700GWを超え、世界各地で最も安価な電源となっています。日本でも順調に導入が進んでいる一方、太陽電池モジュールの生産量は、2013年の約13%から2017年の約3%へと、日本メーカーのシェアが近年大幅に低下しています。太陽光発電の開発の方向性としては、壁面・車載分野の超高効率化、軽量化が不可欠であり、日本が強みとする薄膜太陽電池(ペロブスカイト、CIGS、GaAs系)や高効率結晶シリコンにおける高い技術力をもとに新型モジュールを開発し、世界に先駆けて新市場を創出することが考えられます。特に、次世代タンデム太陽電池については、高い技術力を持つ日本が優位であると期待できます。

4. 風力発電

風力発電については全世界で592GWが導入されていますが、そのうち24GWが洋上風力あり、洋上風力は2050年までに2018年比で40倍まで拡大すると予測されています。欧州に比べて日本の風力発電の導入量割合は低く、第6次エネルギー基本計画における2030年の電力構成でも風力は太陽光の1/3程度です。一方で、洋上風力発電は「大量導入」「コスト低減」「経済波及効果」が期待でき、再生可能エネルギーの主力電源化に向けた切り札になるとの見方から、「洋上風力産業ビジョン(第一次)」において、政府は導入目標、産業界は国内調達・コスト削減目標を掲げました。洋上風力サプライチェーン全体を8つの分野に区分し、分野ごとのコスト削減と要素技術開発を加速し2025年前後には実海域での実証を行うことにより、商用化につなげようとしています。

5. 地熱発電

地熱発電は、自然条件に左右されず安定的な発電が可能、CO2排出量が少ない国産のエネルギー源、災害時・緊急時の非常電源と利用できる、地熱エネルギーは熱利用できるなどの特徴があります。2020年時点での世界の総発電設備容量は15GW程度で、トルコ、インドネシア、ケニア、アメリカ、アイスランドなど一部の国で顕著に進んでいますが、日本を含む数カ国では停滞傾向にあります。日本は2030年までに1.5GWの導入を目指していますが、2012年のFIT開始から2019年までの新規の導入量は80MWにとどまっています。その理由として、現状アクセス可能な地熱資源量の少なさ、開発リスク・コストの高さ、調査から発電開始までのリードタイムの長さが挙げられます。今後導入を加速するためには、資源量拡大やコスト低減に向けた研究開発や、地元理解のための合意形成手法の確立等が必要です。また、日本においては、在来型地熱発電より高いポテンシャルを有する超臨界地熱発電が期待されており、2040年から2050年での実用化を目指しています。

6. 水素技術

再生可能エネルギーで作った電気を貯蔵する技術のうち、長期的な電力貯蔵には水素によるエネルギー貯蔵が適しています。水素技術には、CO2フリーで製造可能、輸送・貯蔵できる、利用時にCO2を出さない(水素発電、燃料電池、還元剤として産業利用)といった特徴があり、CO2排出ゼロを目指すための重要技術の一つです。現状の課題であるCO2フリー水素のコスト低減に向けて、水電解技術開発、必要電力の削減や固定費の低減、輸送・貯蔵にかかる取り組み、利用技術などについて検討を進めています。

7. 蓄電池

再生可能エネルギーの貯蔵、電気自動車の利用拡大という点でCO2削減に貢献する技術として急拡大が見込まれることから、2030年には車載用の蓄電池の需要は電力貯蔵需要量の15~30倍になると予想されています。現時点での主力電池はリチウムイオン電池ですが、2030年代には全固体リチウムイオン電池、2040年以降には革新型電池が主力になると考えられています。

8. まとめ

地球温暖化への対策を経済成長の制約やコストと考える時代は終わり、国際的にも成長の機会と捉える時代に突入しました。温暖化問題は日本だけで解決できるものではなく、国際的な連携やルール作りを通して世界全体で取り組むべき重要課題ですから、日本の技術をどう世界に貢献していくか考えていく必要があります。現在NEDOでは過去にない規模でグリーンイノベーション基金を展開しています。このような枠組みを活用することで、カーボンニュートラルに向けた世界との競争を戦っていきたいと考えています。

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