建築計画・意匠系研究室

佐藤健司 教授

「オペレーティング・システムとしての建築・都市設計論」

都市の作られ方、その構造、あるいはその読解の仕方を現在の視点で、いま一度改めて整理することから出発したいと考えています。私が学生であった頃、1980年代に主流であった考えは、都市というものは集落が自然に成長・発展して大きくなったものであるから、計画や設計の対象ではないのではないかという疑念です。言い換えると、建築家は都市の設計から撤退していました。都市は作るべき対象ではなく、建物のデザインをするにあたって参照すべき対象であると考えられたのです。もちろんこれは、1950?60年代にコルビュジェや丹下健三によって展開された機能主義的な都市計画理論の大きな挫折を経てのことです。そして80年代から現在に至る30年間に建築設計の現場で何があったかというと、一番大きな変革はコンピュータによってもたらされたと思います。コンピュータは思考するための道具であると同時に、表現するため、プレゼンテーションするための道具でもあります。また、建築の設計というのは、建物を実際に作る前に図上で模擬演習する、つまりシミュレーションする、という側面を含みますが、コンピュータはそのための道具でもあります。そして、そのコンピュータ自体のデザインのされ方を調べてみると、ハードウェアである建築のデザイン手法と比較した場合、興味深い対比が見出されます。コンピュータには、常に全体が伸びたり縮んだりするようなシステムのデザイン手法が取り入れられています。これは全体の輪郭をいったん固定し、その枠内で細分化や組織化を行う建築の手法と対照的です。コンピュータ以外にも過去30?40年の間に社会に大きな変革をもたらし、ひいては建築や都市のものの見方を変えるような事象があったかもしれませんが、とりあえずは、このような視点で今までの建築論・都市論を再評価してみよう、というのが私の研究の出発点です。

都市ネットワークの生成シミュレーション