県内小学校の通学時のヘルメット着用指導の調査結果について

研究活動

県内小学校の通学時のヘルメット着用指導の調査結果について

2021年末の指導校の割合は33.9%、4年前の2017年5月調査とほぼ変わらず

ニュースリリース(PDF)

【研究のポイント】
・2021年6月に起きた千葉県八街市児童5人死傷事故後に実施された通学路の緊急点検によれば、危険通学路は全国で約7万2千カ所(静岡県は10月末時点で約1千カ所)にのぼる。
・学童のヘルメット着用には交通事故や事故死を減らす効果があることから(箕輪ら, 2000)、2021年末に県内小学校の通学時のヘルメット着用指導状況を質問紙調査したところ、着用指導校は33.9%で、4年前の調査結果(33.4%)とほぼ変わらないことが判明。
・県内小学校の通学時のヘルメット着用指導校の割合は通学路の緊急点検後の2021年末の時点でも「3割程度」であること、ヘルメット着用指導には「通学路の交通量の増加」と「保護者からの要望や意見」、普及には「ヘルメットの軽量化」が関係することが示唆。

【概要】
2021年6月に起きた千葉県八街市児童5人死傷事故後に実施された通学路の緊急点検によれば、危険通学路は全国で約72千カ所(静岡県内は10月末時点で約1千カ所)にのぼることから、安全対策が喫緊の課題です。学童のヘルメット着用には交通事故や事故死を減らす効果があることから(箕輪ら, 2000)、小学校の通学時のヘルメット着用指導状況を把握することは安全対策として重要です。さらに、ヘルメット着用指導状況の把握は、甚大な被害が想定される南海トラフ地震等の自然災害対策等においても大きな意義があります。
静岡県に関しては、2017年に県教育委員会が交通安全調査を行った結果、登下校時にヘルメット着用を義務付けていた小学校は33.4%(県内公立小学校502校中168校)だったことが報告されていますが、その後の状況や指導に関係する要因はこれまで検討されていませんでした。
静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科の本多明生准教授(専門:心理学)、同学科の酒井いお汰さん(2021年度卒業生)は、2021年末に静岡県の小学校の通学時のヘルメット着用指導状況に関する質問紙調査を行いました。調査は、県内の小学校497校(分校5校は除く)から無作為抽出した248校(50%)に、20211117日に調査票を郵送する形式で行われました。同年1226日まで返送された103校(回収率41.5%:公立校101校、私立校2校、不備があった1校は除く)の回答を分析した結果、(1)通学時のヘルメット着用指導を行っていた学校は33.9%103校中35校)、(2)ヘルメット着用指導を行う理由で有意に多く選択された項目は「通学路の交通量が多いため(選択率80.0%)」、(3)ヘルメット着用指導を行わない理由で有意に多く選択された項目は「保護者から要望や意見がないため(選択率67.6%)」、(4)ヘルメット着用指導の普及に関係する社会的な要因・事柄で最も多く選択された項目は「ヘルメットの軽量性能が現在よりも向上して、児童の身体的負担が軽減されること(選択率64.0%)、であることがわかりました。
したがって、この研究結果から、(1)小学校の通学時のヘルメット着用指導率は通学路の緊急点検後の2021年末の時点でもほぼ変らず「3割程度」であること、(2)ヘルメット着用指導には「通学路の交通量の増加」と「保護者からの要望や意見」、(3)普及には「ヘルメットの軽量化」、が関係することが示されました。本研究成果は、20221029日から30日に静岡県地震防災センターで開催された第51回(2022年度)地域安全学会研究発表会(秋季)にて「小学校における通学時のヘルメット着用指導状況:2021年静岡県実態調査」というタイトルで発表されました。

【背景】
2021年6月に起きた千葉県八街市児童5人死傷事故後に実施された通学路の緊急点検によれば、危険通学路は全国で約72千カ所(静岡県内は10月末時点で約1千カ所)にのぼることから、安全対策が喫緊の課題です。学童のヘルメット着用には交通事故や事故死を減らす効果があることから(箕輪ら, 2000)、小学校の通学時のヘルメット着用指導状況を把握することは安全対策として重要です。さらに、ヘルメット着用指導状況の把握は、甚大な被害が想定される南海トラフ地震等の自然災害対策等においても大きな意義があります。
静岡県に関しては、2017年に県教育委員会が交通安全調査を行った結果、登下校時にヘルメット着用を義務付けていた小学校は33.4%(県内公立小学校502校中168校)だったことが報告されていますが、その後の状況や指導に関係する要因はこれまで検討されていませんでした。

【成果】
静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科の本多明生准教授(専門:心理学)、同学科の酒井いお汰さん(2021年度卒業生)は、2021年末に静岡県の小学校の通学時のヘルメット着用指導状況に関する質問紙調査を行いました。
調査は、県内の小学校497校校(分校5校は除く)から無作為抽出した248校(50%)に、20211117日に調査票を郵送する形式で行われました。調査内容は、各学校の(1)ヘルメット着用指導を行う理由、(2)ヘルメット着用指導を行わない理由、(3)ヘルメット着用指導の普及に関係する社会的な要因・事柄、などについてでした。同年1226日まで返送された103校(不備があった1校は除く、回収率41.5%(公立校101校、私立校2校))の回答を分析した結果、(1)通学時のヘルメット着用指導を行っていた学校は33.9%103校中35校)、(2)ヘルメット着用指導を行う理由で有意に多く選択された項目は「通学路の交通量が多いため(選択率80.0%)」(1参照)、(3)ヘルメット着用指導を行わない理由で有意に多く選択された項目は「保護者から要望や意見がないため(選択率67.6%)」(2参照)、(4)ヘルメット着用指導の普及に関係する社会的な要因・事柄で最も多く選択された項目は「ヘルメットの軽量性能が現在よりも向上して、児童の身体的負担が軽減されること(選択率64.0%)」(3参照)、であることがわかりました。

221031news-1.png1.ヘルメット着用指導を行う理由(複数選択可)(n = 35)

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2. ヘルメット着用指導を行わない理由(複数選択可)(n = 68)

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図3. ヘルメット着用指導の普及に関係する社会的な要因・事柄(複数選択可)(n = 103)

したがって、調査結果から、(1)小学校の通学時のヘルメット着用指導率は通学路の緊急点検後の2021年末の時点でも2017年とほぼ変わらない「3割程度」であること、(2)ヘルメット着用指導には「通学路の交通量の増加」と「保護者からの要望や意見」、(3)普及には「ヘルメットの軽量化」、が関係することが示されました。これは、静岡県の小学校の通学時のヘルメット着用指導が「どの程度行われているのか」、「どのような要因が関係するのか」に関する知見を提供する研究成果です。

【今後の展開】
2017年交通安全調査以来となる、小学校の通学時のヘルメット着用指導状況調査を実施した結果、着用指導校の割合は4年後の2021年末の時点でもほぼ同じ「3割程度」であることがわかりました。小学校における通学時のヘルメット着用指導の把握は、危険通学路等の安全対策だけではなく、甚大な被害が想定される南海トラフ地震等の自然災害対策等においても重要です。小学校における通学時のヘルメット着用指導状況には地域差があることも想定されることから、今後、本研究を全国調査等へと発展させることによって、我が国の小学校における安全対策や自然対策等の向上に資する知見が得られる可能性が高い、と考えます。

【引用情報】
箕輪良行・柏井昭良・井上幸万 (2000). ヘルメット着用義務化は学童の交通事故および事故死を減らす. 日本救急医学会雑誌, 11(9), 444-450.

【発表情報】
本多明生・酒井いお汰 (2022). 小学校における通学時のヘルメット着用指導状況: 2021年静岡県実態調査. 第51回地域安全学会研究発表会 (秋季), 2022年10月29-30日, 静岡県地震防災センター.

【問合せ先】
(研究に関すること)
静岡理工科大学情報学部情報デザイン学科
准教授 本多明生
E-mail:honda.akio.cs*sist.ac.jp (*@に置き換えてください)
(報道に関すること)
静岡理工科大学総務部社会連携課 担当:中村
TEL:0538-45-0108 E-mailshakai@sist.ac.jp