水に不溶な高分子マイクロファイバーを開発(理工学部物質生命科学科 機能性高分子研究室)

研究活動

 本学理工学部物質生命科学科 小土橋陽平 准教授、百瀬月花(2021年度卒 学士)、竹内希望(2020年度卒 学士)、内田遥樹(修士1年)、齊藤俊介(修士1年)、中田和希(修士1年)が、ポリビニルアルコール(PVA)をベースとした水に不溶なマイクロファイバーを作製することに成功しました。
 PVAはその生体適合性から、ドレッシング材など医療機器としての応用が期待されています。PVAは水に溶ける為、多くの場合、使用には架橋による水への不溶化が求められます。通常、PVAを架橋し一定の機械的な強度を持たせるには、有毒な有機化合物や、γ線の照射など特殊な装置が必要です。本研究では、PVAに開発した共重合体を混合し135℃に昇温するのみで、共重合体中のカルボキシ基とPVAのヒドロキシ基間に共有結合を導入し、水に不溶なマイクロファイバーを作製しました。また共重合体にはベンゾオキサボロール基が含まれ、 PVAと動的な共有結合を結ぶことで機械的な強度を調整することができます。マイクロファイバーは、赤血球を用いた溶血試験にて低い溶血率(<5%)を示すことが観察されました。混合する共重合体にカチオン性を導入することで、マイクロファイバー表面の電荷をプラスまたはマイナスに制御し、選択的な色素の吸着にも成功しています。材料の表面電荷の制御は,医療機器においてタンパク質吸着や血栓形成の抑制につながります。また、マイクロファイバーを束ね、ねじることで機械的な強度が増加することも確認しました。これらのマイクロファイバーは、センサーや吸着材など医療機器への応用が期待されます。
 本研究は名古屋大学医学部との共同研究により遂行されました。研究の一部は, 文部科学省 地域イノベーション・エコシステム形成プログラム(実施主体: 静岡大学, 浜松市),科研費(基盤C,萌芽)により行われております。

・本研究成果はPolymer誌に掲載されました。原著論文はこちら
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