マイクロスケールのパターン形状を持つプラスチックのフィルムから、パターン形状を維持したマイクロプラスチックが発生することを報告((理工学部物質生命科学科 機能性高分子研究室)

研究活動

 本学 理工学部 物質生命科学科 小土橋 陽平 准教授、内田遥樹(修士1年)、内山和郁子(2019年度卒 学士)、栗田恵利花(2020年度卒 学士)、桐原正之 教授が、マイクロスケールのパターン形状を持つプラスチックのフィルムから、パターン形状を維持したマイクロプラスチックが発生することを報告しました。

 プラスチックの生産量は年間4億トン以上であり、川・海洋へのプラスチックの流出は世界における喫緊の課題の一つです。マイクロプラスチック(一般的に粒径1μm5mmのプラスチック)は破片やペレット状、球状、繊維状、フィルム状、ニードル状など様々な形状を持ち、その形状により特性や蓄積する臓器の場所が異なることなどから、生物への影響が懸念されています。一方で、マイクロスケールのパターン構造を有するプラスチックは、その高い表面積による特徴から、撥水表面や電子デバイスなど様々な分野で応用されています。
 一般的なプラスチックが自然環境で分解するには数十年から数百年の時間がかかることがあり、実験室では破砕や温度、pH、光など擬似的な環境を用い、その分解挙動を解析しています。本学 機能性高分子研究室では、酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム五水和物水溶液中にて、数時間で分解するポリメタクリル酸(poly(MAAc))とポリビニルアルコール(PVA)(またはエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH))からなる架橋フィルムの作成に成功しています。本研究では、poly(MAAc)/PVA(or EVOH)のフィルムにマイクロパターンの構造を転写し、酸化環境や超音波処理、これらの組み合わせによるフィルムの分解挙動を分析しました。マイクロパターンを持つフィルム(A)を次亜塩素酸ナトリウム・五水和物水溶液により処理すると、溶解によるマイクロパターン構造の高さの減少が観察されました。また超音波処理のみでは、マイクロパターンの溶解や剥離は観察されませんでした。次亜塩素酸ナトリウム・五水和物水溶液に浸漬後、超音波処理を行うことで、マイクロパターン構造がフィルム表面から剥離する様子が観察されました(B)。剥離したマイクロパターンは、酸化および超音波処理後の上澄み液からも観察されました(C)。これらの結果は、マイクロパターンを有するプラスチックフィルムが、そのパターン形状を有するマイクロプラスチックを発生する可能性を示唆します。また、六角形や四角形など特徴的な形状を持つマイクロプラスチックの生産方法について情報を提供します。本成果は、Polymer Journal誌に掲載されました。なお、本研究の一部は公益財団法人 JFE 21世紀財団、公益財団法人 池谷科学技術振興財団の研究助成により行われました。また、実験の一部は本学 先端機器分析センターの機器を用いて行われました。

・ 原著論文はこちら(外部リンク)
・ 機能性高分子研究室のホームページはこちら(外部リンク)